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参院選を2日後に控えた8日、自民党候補の応援のため奈良市を訪れていた安倍晋三元首相(67)が近鉄大和西大寺駅前で街頭演説中、凶弾に倒れた。首相としての在任期間は通算8年8か月という憲政史上最長を記録し、国際舞台でも確かな足跡を残した安部氏の死は、日本だけにとどまらず世界にも大きな衝撃と悲嘆をもたらした。
米紙ワシントン・ポストは10日の論説で、「安倍晋三元首相暗殺のニュースが広まるにつれ、各国の大統領、首相、君主、外交官、ビジネスリーダーのSNSやウェブサイトからは同氏への賛辞が飛び交った」と紹介。バイデン米大統領は、安倍首相をたたえるために半旗を掲げるよう指示し、「日本国民の誇り高き代表であり、米国の信頼できる友人」と表現。ブリンケン国務長官が哀悼の意を表すため、急きょ日本を訪問することも10日発表された。同紙は米政府によるこれら一連の配慮が、同盟国指導者の死去としては異例の対応だと説明した。
同紙はまた、第2次安倍政権(2012年~20年)の間に米国のみならず、アジアをはじめ多くの友好国と日本との関係をさらに強化するため、自ら出向いた外遊の数は81回にもおよび、世界から寄せられた賛辞は安倍氏のグローバルなステーツマンとしての評価を証明していると指摘。その上で、安倍氏の途絶えることのなかった海外訪問は日本の国際的地位を高め、地域の安全保障、貿易、開発を促進する上で、日本がより大きな指導的役割を果たすことにつながったと評した。
そんな安倍氏が生前、日本の信頼すべき友人として、また、価値観を共有する隣人として最重要視していたのが台湾だ。蔡英文総統は「安倍元首相銃撃される」との一報を受け、いち早く回復を祈るメッセージを発信。死去が報じられると、蔡氏は日本語で、「安倍晋三元首相のご逝去の報に接し、言葉にならないほどのショックを受けています。台湾国民も深い悲しみの中にいます」とツイートした。
続けて蔡氏は、安倍氏が「長年にわたり日台関係の発展に尽くされた」とし、コロナ禍ではワクチン供与を受けたことにも感謝した。その上で、「安倍先生は生前、台湾に実に多くのご支援とご配慮をくださいました。私たちはこのことを決して忘れません。先生は天国でもきっと、インド太平洋地域の民主主義を見守ってくださると信じています。心からのご冥福をお祈りします」とし、哀悼の意を示した。
ニューヨークの国連本部では、8日に開かれた国連安全保障理事会の冒頭、議長のブラジルのコスタ国連大使が、「不条理な暗殺に悲しみ、衝撃を受けている」と述べ、安保理理事国15か国の代表ら全員が起立し黙とうをささげた。
英国のジョンソン首相やフランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相、イタリアのドラギ首相、スペインのサンチェス首相、カナダのトルドー首相ら主要各国のリーダーをはじめ、韓国の尹大統領、フィリピンのマルコス大統領、また同時期に首相を務めたドイツのメルケル氏や米国のトランプ前大統領、オバマ元大統領らも哀悼のメッセージを寄せた。オセアニアからは豪州のアルバニージ首相やニュージーランドのアーダーン首相も弔電を送った。