2022-07-11 政治・国際

世界に衝撃と悲嘆もたらした安倍元首相の死 蔡総統は「台湾へ多くの支援と配慮」に感謝

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参院選を2日後に控えた8日、自民党候補の応援のため奈良市を訪れていた安倍晋三元首相(67)が近鉄大和西大寺駅前で街頭演説中、凶弾に倒れた。首相としての在任期間は通算8年8か月という憲政史上最長を記録し、国際舞台でも確かな足跡を残した安部氏の死は、日本だけにとどまらず世界にも大きな衝撃と悲嘆をもたらした。

米紙ワシントン・ポストは10日の論説で、「安倍晋三元首相暗殺のニュースが広まるにつれ、各国の大統領、首相、君主、外交官、ビジネスリーダーのSNSやウェブサイトからは同氏への賛辞が飛び交った」と紹介。バイデン米大統領は、安倍首相をたたえるために半旗を掲げるよう指示し、「日本国民の誇り高き代表であり、米国の信頼できる友人」と表現。ブリンケン国務長官が哀悼の意を表すため、急きょ日本を訪問することも10日発表された。同紙は米政府によるこれら一連の配慮が、同盟国指導者の死去としては異例の対応だと説明した。

同紙はまた、第2次安倍政権(2012年~20年)の間に米国のみならず、アジアをはじめ多くの友好国と日本との関係をさらに強化するため、自ら出向いた外遊の数は81回にもおよび、世界から寄せられた賛辞は安倍氏のグローバルなステーツマンとしての評価を証明していると指摘。その上で、安倍氏の途絶えることのなかった海外訪問は日本の国際的地位を高め、地域の安全保障、貿易、開発を促進する上で、日本がより大きな指導的役割を果たすことにつながったと評した。

そんな安倍氏が生前、日本の信頼すべき友人として、また、価値観を共有する隣人として最重要視していたのが台湾だ。蔡英文総統は「安倍元首相銃撃される」との一報を受け、いち早く回復を祈るメッセージを発信。死去が報じられると、蔡氏は日本語で、「安倍晋三元首相のご逝去の報に接し、言葉にならないほどのショックを受けています。台湾国民も深い悲しみの中にいます」とツイートした。

続けて蔡氏は、安倍氏が「長年にわたり日台関係の発展に尽くされた」とし、コロナ禍ではワクチン供与を受けたことにも感謝した。その上で、「安倍先生は生前、台湾に実に多くのご支援とご配慮をくださいました。私たちはこのことを決して忘れません。先生は天国でもきっと、インド太平洋地域の民主主義を見守ってくださると信じています。心からのご冥福をお祈りします」とし、哀悼の意を示した。

ニューヨークの国連本部では、8日に開かれた国連安全保障理事会の冒頭、議長のブラジルのコスタ国連大使が、「不条理な暗殺に悲しみ、衝撃を受けている」と述べ、安保理理事国15か国の代表ら全員が起立し黙とうをささげた。

英国のジョンソン首相やフランスのマクロン大統領、ドイツのショルツ首相、イタリアのドラギ首相、スペインのサンチェス首相、カナダのトルドー首相ら主要各国のリーダーをはじめ、韓国の尹大統領、フィリピンのマルコス大統領、また同時期に首相を務めたドイツのメルケル氏や米国のトランプ前大統領、オバマ元大統領らも哀悼のメッセージを寄せた。オセアニアからは豪州のアルバニージ首相やニュージーランドのアーダーン首相も弔電を送った。

安倍氏の長きにわたる積極的な平和外交の積み重ねの証として、西側だけではなく、中近東やアジア諸国、南米など、多くの国のリーダーらが安倍氏の死を悼んだ。親交の深かったインドのモディ首相は安倍氏が亡くなった翌日の9日を国として喪に服す日と定め、ブラジルのボルソナロ大統領は3日間喪に服すことを宣言した。

16年に訪英した際、安倍夫妻が面会したエリザベス英女王は、「突然の痛ましい訃報に深く悲しんでいます」とツイート。「突然の痛ましい訃報に深く悲しんでいます。彼の日本への愛、そして英国との絆を一層深めたいとの思いは明確でした」とその死を悼んだ。

ウクライナのゼレンスキー大統領は、「安倍元総理の暗殺という恐ろしいニュースを知った。この困難な時に、ご家族と日本の人びとに心よりお見舞い申し上げます。この凶悪な暴力行為はどんな言い訳も通用しない」とツイートした。

一方、首相在任中には27回も会談したロシアのプーチン大統領は安倍氏の母親・洋子さんと妻・昭恵さん宛てに弔電を送ったことを大統領府が明らかにした。プーチン氏は「犯罪者により、長年にわたって日本政府を率い、日露関係の発展に尽くした卓越した政治家の命が奪われた。私は晋三と定期的に接触するなかで、彼の素晴らしい性格とプロとしての仕事の質が発揮されるのを目にしてきた。この素晴らしい人物と素晴らしい記憶は彼を知る全ての人びとの心に残るだろう」と故人を称えた。

安倍氏が提唱した「自由で開かれたインド太平洋」構想と対立してきた中国の習近平国家主席も岸田首相に弔電を送り、「痛惜の念に堪えない」とし、「中国政府と人民を代表し、安倍元総理が突然の不幸に遭い、この世を去ったことに深く哀悼の意を表し、ご遺族にお悔やみを申し上げる」と弔意を記した。

ワシントン・ポスト紙は、安倍氏が右翼とみなされることはあっても、戦前の日本に戻すことを密に望む〝暗号ファシスト〟ではなかったと指摘し、「21世紀に日本がかつてないほど世界への扉を開くことを含め、自国が安全で豊かになるために必要なことは全てやると考える、先見の明のある政治家だった」とたたえた。

 

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