2022-07-08 政治・国際

侵攻前夜に仏露首脳が電話で批判の応酬 プーチン、マクロン両氏の会談音声が流出

© Photo Credit: Reuters /達志影像

注目ポイント

ロシアによるウクライナ侵攻前夜、プーチン露大統領とフランスのマクロン大統領による緊迫した状況下で電話会談が行われていた。そこで交わされた激しい批判の応酬を録音した音声が流出。仏公共放送局フランス2は問題の録音データを入手し、それをもとに制作したドキュメンタリー番組をこのほど放送した。

侵攻4日前の2月20日に張り詰めた空気の中で行われた仏露首脳会談。その流出した音声データを入手したフランス2はドキュメンタリー「大統領、欧州と戦争」を制作。番組はマクロン氏のウクライナ戦争に至るまでの対応を検証した。

番組が放送した仏露首脳会談の会話はこうだ。

ロシアがウクライナとの国境周辺に19万人の兵力を集結させ、全面侵攻の様相を示す中、マクロン氏はプーチン氏に対し、緊迫するウクライナ情勢への自身の見解を示し、最悪のシナリオを避けるための「有益な行動」を提案しようとした。

ところがプーチン氏はすぐに話題を変え、ウクライナのゼレンスキー大統領について語り始めた。ウクライナ東部ドンバス地方における停戦合意(ミンスク合意)の履行にあたり、ゼレンスキー氏はマクロン氏に「噓をついている」と主張したのだ。

ロシアがウクライナ南部の領土クリミア半島を併合した2014年3月、ドンバス地方を構成するルハンシク州とドネツク州では、親ロシア派の分離独立を求める武装勢力とウクライナ軍による戦闘が激化。同年9月には親ロシア派の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」及びロシアとウクライナの4者が停戦のため、ベラルーシの首都ミンスクで議定書に調印した。

それでも戦闘は散発的に起き、翌15年2月には議定書の復活のため、「ミンスク2」と呼ばれる協定に欧州安全保障協力機構(OSCE)の監督のもと、フランスとドイツが仲介し、ウクライナとロシアが署名した。

だが、この協定は分離独立派が占拠するルハンシク、ドネツク2州の一部地域(「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」)に自治権を認めるとしたことから、ウクライナ国内では不満が高まり、19年に大統領に就任したゼレンスキー氏は協定の履行を拒否。一方の分離独立派もミンスク同意で定められた「違法なグループの武装解除」などの条件を反故にしていた。

プーチン氏は、ゼレンスキー氏がドンバスの分離独立派との交渉を拒否していると非難を繰り返したことから、イライラを隠せないマクロン氏は声を荒らげ、「あなたの法律専門家はどこで法律を学んだんだ!」と怒りをあらわにした。

さらにマクロン氏は、「主権国家の法律専門家はあなたにどう説明できるか分からないが、(ウクライナからの独立を定める)法案は分離独立派が提案したもので、民主的に選ばれた指導者によるものではない」と一蹴し、公選されたゼレンスキー氏との違いを指摘した。

すると、プーチン氏はゼレンスキー政権が民主的に誕生したものではないと主張し始め、「彼らは殺人や放火、生きたまま民衆を焼き殺すなど、血なまぐさいクーデターで権力を掌握した」と荒唐無稽とも思われる話を持ち出した。事実は、ゼレンスキー氏は19年の大統領選で得票率73%を集め、圧勝した。

両首脳による強い言葉の応酬は激しさを増し、マクロン氏はついに、「分離独立派の要求など関係ない」と言い放ち、彼らの存在そのものが非合法だと語気を強めた。

口論はさらに続いたが、マクロン氏は会談を外交の軌道に戻し、全ての当事者による会合を提案した。また、ゼレンスキー氏には「冷静さを保つよう」連絡することを約束したが、プーチン氏にもウクライナ国境の軍を動かさないよう求めた。

そのロシア軍による国境付近での演習についてマクロン氏は、「昨日は砲撃が多かった」と指摘。その上で、「対話の機会を持ち続けるため、物事を落ち着かせる必要がある」と忠告すると、プーチン氏は軍事演習が同日夜には終了するとしながらも、「ドンバスの状況が落ち着くまで、国境での軍事プレゼンスは維持する」と断言した。

それでもマクロン氏はプーチン氏に食い下がり、「いかなる挑発にも乗らないように」と忠告し、数日中にジュネーブで米国のバイデン大統領と対面の会談に応じるよう迫った。するとプーチン氏は愛想よく振る舞いながらも、具体的な日程を設定することは拒んだ。その流れでプーチン氏は最後に、「正直言って、今日はエクササイズもせずにジムからここに来た。今日はアイスホッケーに行きたかった」とマクロン氏に告げ、電話会談を終えた。

ウクライナ危機の解決策を外交的に見出すため、バイデン氏と会うことを「原則的」に受け入れるとマクロン氏に約束したにもかかわらず、プーチンはその翌日、ウクライナから分離独立したと主張する「ドネツク人民共和国」と「ルハンシク人民共和国」を国家として承認。そして3日後の2月24日、ロシア軍はウクライナへの本格的な侵攻を開始し、キーウを含む都市や町にミサイル攻撃を開始した。

 

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