注目ポイント
ロシアによるウクライナ侵攻前夜、プーチン露大統領とフランスのマクロン大統領による緊迫した状況下で電話会談が行われていた。そこで交わされた激しい批判の応酬を録音した音声が流出。仏公共放送局フランス2は問題の録音データを入手し、それをもとに制作したドキュメンタリー番組をこのほど放送した。
侵攻4日前の2月20日に張り詰めた空気の中で行われた仏露首脳会談。その流出した音声データを入手したフランス2はドキュメンタリー「大統領、欧州と戦争」を制作。番組はマクロン氏のウクライナ戦争に至るまでの対応を検証した。
番組が放送した仏露首脳会談の会話はこうだ。
ロシアがウクライナとの国境周辺に19万人の兵力を集結させ、全面侵攻の様相を示す中、マクロン氏はプーチン氏に対し、緊迫するウクライナ情勢への自身の見解を示し、最悪のシナリオを避けるための「有益な行動」を提案しようとした。
ところがプーチン氏はすぐに話題を変え、ウクライナのゼレンスキー大統領について語り始めた。ウクライナ東部ドンバス地方における停戦合意(ミンスク合意)の履行にあたり、ゼレンスキー氏はマクロン氏に「噓をついている」と主張したのだ。
ロシアがウクライナ南部の領土クリミア半島を併合した2014年3月、ドンバス地方を構成するルハンシク州とドネツク州では、親ロシア派の分離独立を求める武装勢力とウクライナ軍による戦闘が激化。同年9月には親ロシア派の「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」及びロシアとウクライナの4者が停戦のため、ベラルーシの首都ミンスクで議定書に調印した。
それでも戦闘は散発的に起き、翌15年2月には議定書の復活のため、「ミンスク2」と呼ばれる協定に欧州安全保障協力機構(OSCE)の監督のもと、フランスとドイツが仲介し、ウクライナとロシアが署名した。
だが、この協定は分離独立派が占拠するルハンシク、ドネツク2州の一部地域(「ドネツク人民共和国」と「ルガンスク人民共和国」)に自治権を認めるとしたことから、ウクライナ国内では不満が高まり、19年に大統領に就任したゼレンスキー氏は協定の履行を拒否。一方の分離独立派もミンスク同意で定められた「違法なグループの武装解除」などの条件を反故にしていた。
プーチン氏は、ゼレンスキー氏がドンバスの分離独立派との交渉を拒否していると非難を繰り返したことから、イライラを隠せないマクロン氏は声を荒らげ、「あなたの法律専門家はどこで法律を学んだんだ!」と怒りをあらわにした。
さらにマクロン氏は、「主権国家の法律専門家はあなたにどう説明できるか分からないが、(ウクライナからの独立を定める)法案は分離独立派が提案したもので、民主的に選ばれた指導者によるものではない」と一蹴し、公選されたゼレンスキー氏との違いを指摘した。