注目ポイント
誰もいない夜と早朝の時間帯が最も美しい町――。そんな台湾・九份の4つの民宿を紹介する。観光地として日本人にも人気があり、日中はとても賑やかな九份だが、深夜から早朝にかけて静寂と閑散に包まれた町並みが現れ、とても美しく感じられる。
爽やかな休日の午後、山間の町の高低差のある路地を歩きながら、草仔粿(ヨモギ餅のようなスイーツ)食べ歩きしたり、この小さな町に残された時間の痕跡を数えながら、一歩一歩進んででいくのもいいかもしれない。 丘の上の校門に到着し、今まで歩いてきた曲がりくねった道を振り返ると、雨の降らない町の寂しさは九份にはなく、ゆっくりと海に沈んでいく遠くの夕日が、醤油が混じったオレンジ色の卵黄のように見えることに気づかされる。
30分ほど経った頃、夕日が完全に海面に飲み込まれると、店の前に吊るされた赤提灯に明かりが灯り、海上の漁火が揺らめき始め、まだ二人、三人とたむろしている人だかりも、海の潮流のように明るい街路へと退散し、にぎやかな山里も再び静寂を取り戻すのだ。
しかし、誰もいない静かな深夜や早朝にこそ、この町が最も美しくなることを、誰も知らない。 夜の山里をゆっくり楽しみたい方のために、独り占めできて、行ってみたくなるような民宿を厳選しまとめてみた。
#01:蜜多山旅

© 蜜多山旅
ヤブやシダの生い茂る小道を抜け、苔(こけ)むした階段を上る。少し大変かもしれないが、そこの重い扉を開け、大きな緑の室内バルコニーに迎えられた瞬間、苦労してきた甲斐があった、と感じるに違いない。
母屋に入ると、テーブル、イス、ランプ、そして書き物や読書をするのための古い木のテーブルが置かれた広々としたリビングルームが迎えてくれる。 長いダイニングテーブルの上には枝が置かれ、静寂な空間を演出している。石壁はモダンな家具と強いコントラストを成しているが、違和感を与えることはない。

© 蜜多山旅
夕食のための簡易キッチン、夜中に話に花を咲かせるためのテラス、ゆったりと入浴できるバスルームなど、まるでアーティストが山で過ごすプライベートな隠れ家のような空間だ。 昼間の疲れを洗い流し、眠りにつくまで遮るもののない山の時間を楽しみ、ロフトの寝室に上がれば、明日の朝、窓から降り注ぐ優しい日差しを浴びながら目を覚ますことができる。(住所:未公開、予約後に通知)
#02: OwlStay:山中夢遊 綠光

© 古家萱
1986年に公開されたフランス映画「緑の光線」をご覧になっただろうか? 幸運にもこの映画を見ることができた人は「自分自身や他人の感情を洞察することができる」と映画の中で言われている。 物語とヒロインが緑の光線を探すストーリーに影響を受けたB&Bのオーナーは、「夾腳拖的家(通称:スリッパの家)」と組み、かつて家族とシェアしていた家を、幸せを象徴する私邸「緑の光線」に生まれ変わらせたのだ。