2022-07-09 政治・国際

月イチ連載「山本一郎の#台湾の件」第4回:「小さくても、価値のある台湾」その秘密

注目ポイント

経済はもちろん、安全保障の面でも持ちつ持たれつの間柄にありながら、一切の法的裏付けがない非政府間の実務関係を維持している日本と台湾。「台湾は国ではなく地域」というスタンスはいつまで続けられるのでしょうか。将来、わずかな確率でも台湾有事が起きるのだとしたら、今こそ必要なこととは──山本一郎さんの月イチ連載です。

台湾海峡が平和であることに依存してきた日本経済

日本にとって「場所的に台湾って大事だよね」ってのは、よく安全保障議論で日本がシーパワーの国だという地政学的な意味合いで取り上げられることは多くあります。

というのも、資源のない我が国日本は、経済立国を推し進め戦後復興を図るにあたり、1950年以降は特に、中東など産油国から原油を輸入し、足りないほかの資源も豪州、中国その他から持ってきて国内で振興した製造業でモノ作りをして、付加価値を付けて輸出するという仕組みで長らく国富を蓄えてきました。1990年ごろのバブル経済の崩壊に至るまで、この手の「冷戦ではあったけど、なんだかんだ世界が平和だったから何事もなく輸出入できていたこと」が復興日本経済の高度成長の決め手になってきました。

その際に、まさに台湾海峡から南シナ海、マラッカ海峡、インド洋を通じて中東に至るタンカーの流れこそが、日本が守るべきシーレーン(海の上の輸送経路)だよということで、この台湾海峡が平和であることに日本の経済は常に依存してきたことになります。

時は下り、2010年代になってくると、台頭していた中国経済の勃興がいよいよ決定的なものとなり、アジアでの経済覇権が完全に中国中心になると、経済的な成功に自信を深めた中国の海洋進出が明白なものとなってきました。南シナ海での中国によるかなり力づくな実効支配の構造は、東アジアからASEAN諸国にかけての地域の安全に生命線を持っていた日本経済においても枢要な問題へと発展してきたのは言うまでもありません。

他方、台湾と日本の関係で言えば、台湾が確固たる地位を維持できる間は、日本も変数として「台湾の近辺は安全だ」となる以上、文字通り持ちつ持たれつの間柄であると言えます。とりわけ、お互いに輸出し合う機械や電気機器を中心とした付加価値の高い製品の貿易においては、対日貿易は2020年でおのおの7兆円、4兆円あまりの輸出ということで、ぶっちゃけ「台湾がないと日本の製造業は止まっちゃう」「日本がいないと台湾経済は沈んじゃう」状態にあるとも言えます。

 

東アジアにおける台湾の地位は極めて希少で価値がある

去年、沖縄県石垣市議会では、特に25年以上の長い友好関係にある台湾蘇澳鎮との交流も踏まえ、地元の人たちの台日関係の窓口として機能している現状から、改めて「『日台関係基本法』制定を求める意見書」が提出されました。悩ましいのは、よくこの手の議論で出てくる「国や地域」という表現において、台湾は国際法上の国家としての条件をすべて満たす存在であるにもかかわらず、常任理事国である中国による一つの中国『原則』によって、日本と対等な国家としての扱いを法的に認めることが困難な部分があるわけです。


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