2022-07-07 政治・国際

ウクライナ軍が米供与の長射程火砲で反攻か ルハンシク州の陥落で焦点はドネツク州へ

© Photo Credit: Reuters /達志影像 Donetsk, Ukraine

注目ポイント

ロシア国防省は今週、ウクライナ東部ドンバス地方2州のうち、ルハンシク州最後の拠点リシチャンシクを掌握し、州全域を制圧したと作戦完了を宣言。ドンバス全域の支配を目指し、次は残るドネツク州への攻勢を強めるものとみられる。一方、ウクライナのゼレンスキー大統領は、リシチャンシクから軍が撤退したことを認め、「必ず奪還する」と表明した。

ロシアのショイグ国防相からルハンシク州を「解放した」との報告を受けたプーチン大統領は3日、他の地域についても「計画通り任務を続けるべきだ」と告げ、「ロシア軍には勇敢かつプロフェッショナルで気力のある兵士が多数いることを知っている。彼ら全員が国家に表彰されるべきだ」とし、軍を称えた。

その上でプーチン氏は、戦闘に従事した部隊を休息させるよう命じるとともに、他の地域でも「同様の結果を得られると期待している」と述べ、別の部隊には任務続行を命じた。5日のロシア紙コメルサント(電子版)によると、プーチン政権はドンバス地方の占領を待って、8月にも親ロシア派武装勢力にロシアへの編入に向けた住民投票を実施させたい考えだという。

東部での戦闘でウクライナ軍は、ルガンスク州の重要都市セベロドネツクとリシチャンスクを拠点にロシア軍の猛攻への抵抗を続けてきたが、激しい消耗戦の末、両市からの撤退を余儀なくされた。このひと月ほどの戦いで、ウクライナ側の戦死者は1日200人に上り、最も多い日で500人ともされる甚大な兵力を失った。ロシア側も相当な人的損失を受けているとみられるが、当局の発表はない。

今後の戦闘の焦点はドネツク州に移る。ウクライナ政府当局者らによると、ロシア軍はドネツク州のスラビャンスクとクラマトルスクに戦力を集中させているとみられる。5日にはスラビャンスクの市場や住宅地を砲撃。同州のキリレンコ知事は、「ロシアはまたしても、市民が集まる場所を故意に狙っている。これは完全なテロだ」と非難した。

そんな中、米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は今週、「過酷な消耗戦でロシア撃破の頼みの綱」として、米国が供与したハイテクロケット砲システムがウクライナ東部の前線に届き始めたと伝えた。「ウクライナ軍将校によると、新兵器投入でロシア軍との激しい砲撃戦のパワーバランスに変化が生じている」という。

同紙はウクライナ軍のバレンティン・コバル中尉の話として、同軍の前線からそう遠くない場所に位置するロシア軍の指揮所はひと月以上、ソ連時代の火砲を装備するウクライナ砲兵隊の射程外だったが、先月末に高機動ロケット砲システム「HIMARS(ハイマース)」1基が届くと状況が変わったと伝えた。

「コバル中尉率いる砲兵隊は夜陰に紛れて、トラックに搭載されたハイマースを発射位置に移動させ、座標を入力して発射ボタンを押した。中尉によれば、重さ約90キロのロケット弾6発がロシア軍基地を襲い、大部分を破壊したという。中尉は現在、ハイマース2基を指揮している」(WSJ紙)

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