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NATO(北大西洋条約機構)首脳会議は29日、スペイン・マドリードで始まったが、例年とは違う、自由主義陣営の結束を再確認するものになっている。欧州の加盟30か国に加え、日本、韓国、オーストラリア、ニュージーランドがアジア太平洋地域のパートナー国として、史上初めて参加しているのだ。これに中国・習近平政権が戦々恐々としていると米ブルームバーグは伝えた。
NATO首脳会議に出席するため、英国のジョンソン首相に同行しているトラス外相は、出発前の英下院外交委員会で、ウクライナに対する武器支援が鍵を握るように、台湾への兵器供与を急ぐことが必要だと訴えた。
トラス氏は、「ロシアによるウクライナ侵攻以前から、われわれはいつも『これ以上酷いことは起きないだろう』との希望的観測で、手遅れになってしまうという傾向がある」と説明。その上で、「もっと早くからウクライナの防衛のために兵器を提供しておけばよかったのだ。この教訓は台湾で生かさなければならない」と説いた。
トラス外相に比べ、ジョンソン首相は中国に直接言及することには、より慎重だと英紙ガーディアンは指摘する。ドイツ南部で行われたG7サミットからマドリードに向かう飛行機の中で、同行記者団から台湾情勢について聞かれたジョンソン氏は、第2次世界大戦に例え、ウクライナを支援する必要性を強調した上で、もしロシアに勝利を許すようなことになれば、その衝撃は「東アジアでも感じられる」と発言し、婉曲に覇権主義国家・中国による台湾有事を示唆した。
米ブルームバーグによるとその中国は、NATOがロシアを敵視していることを批判し、アジア太平洋地域で米国が〝アジア版NATO〟を構築しようとしていると非難。さらに、同地域からNATO首脳会議に初めて出席した日本など4か国について、ブルームバーグは「この地域からスペインに集まった4人のリーダーたちの存在は、中国政府を恐怖に陥れる」と報じた。
NATO首脳会議で加盟国は今後10年の「戦略構想」をまとめるが、すでに中国を「体系的課題」と明記することを決めている。それは民主主義陣営に対抗するため、習近平主席がロシアのプーチン大統領とタッグを組むことにより、地政学的景観の変化を反映することになるからだとブルームバーグは解説した。
同メディアは、米国は〝アジア太平洋版NATO〟を構築しようとしているという主張を否定しているが、バイデン政権は領土問題を抱えるアジア太平洋地域での中国による強硬な主張に対抗するため、それらのパートナー国との関係を強化していると指摘。これは、台湾やフィリピン、日本などに対して軍事的圧力を行使して領土を主張する中国への対抗手段だ。
実際、中国の進出が平和的なものだと受け取る米国のパートナー国は無い。最近ではオーストラリア周辺の太平洋島嶼国(とうしょこく)との安全保障協定を画策し、インドとの国境をめぐっては数十年にわたり紛争を続けてきた。さらに習政権が今後、数年以内に台湾へ侵攻し、アジアでより広範な戦争を引き起こす可能性があるとの懸念も高まっているとブルームバーグは指摘する。