2022-06-27 政治・国際

ジャーナリストの晴れ舞台―報道優秀賞を受賞したThe News Lens台湾の記事とは-

注目ポイント

アジア出版社協会が創設したSOPA優秀報道アワードが6月中旬に発表された。ネットニュース配信社台湾The News Lensは3部門4記事が受賞という快挙を成し遂げた。その4つの記事を紹介する。

≪SOPAについて≫

SOPA(The Society of Publishers in Asia)は、アジア太平洋における報道の自由とジャーナリストの権利の代弁者となるために、1982年に香港で設立された。そして、優れたジャーナリズムを表彰するため、1999年にSOPA Awards for Editorial Excellenceが創設された。2022年6月に発表された各部門のアワードに、台湾TNLの4つの報道記事が受賞した。

≪ジャーナリズムイノベーション優秀賞佳作≫

ジャーナリズムイノベーション優秀賞佳作に選ばれたのはThe News Lensの「2021日本総選挙:自民党過半数得票、岸田時代急展開」(Everything you need to know about Japan’s general election【製作チーム:羅元祺、楊時鈞、黃彥翔、翁世航、林奕甫、Bryan Chou、Nicholas Haggerty】というレポートである。去年10月に行われた第49回衆議院議員総選挙について書かれたものだ。開票前は、野党が共闘して自民党に対抗したため、自民大敗が予想されていたが、いざ実際にふたを開けてみると、立憲民主党などの主な野党が議席数を減らし、岸田時代が本格的にスタートしたあの選挙のレポートである。日本の選挙の仕組みや、各選挙本部に置かれ、当選したら墨で目を入れるダルマの意味、また日本地図上に、北海道、岩手、群馬、東京、神奈川、大阪、福岡、沖縄のボタンがあり、その地域をクリックすると、地域と政治家とのかかわりやその地域の出来事、歴史、特長、出身政治家の経歴や評価などを見ることができるようになっている。後半部分には日本の抱える課題や改憲に必要な人数の解説などの説明があって、日本の総選挙に関する理解を助けている。

 

 

≪オーディオ報道優秀賞≫

オーディオ報道優秀賞に輝いたのは、音声による報道「台湾ワクチン迷子‐ワクチンを打たない自由はあるか?」(Vaccine doubters in Taiwan: Do they have the freedom to refuse getting vaccinated?)。これは約35分間のボイス記事で、インタビューや評論などで構成されている。その内容は「ワクチン迷子とは何か?」「高端ワクチンのみ?それは科学的判断?政治的判断?」「ワクチン迷子は何を心配している?」「ビーガンはワクチン接種してもいい?」「ワクチン接種を受けない人はエゴイストか?」「ワクチン迷子のイタリア人」「ワクチン接種を迷っている人がワクチンを打つ訳とは?」「ワクチン接種を受けない自由はあるか?」となっていて、台湾社会の深層に存在するワクチン接種に対する国民の疑問や不安を、鋭く切り込んでいる。  

 

≪インフォグラフィック報道優秀賞佳作≫

インフォグラフィックとは、図や表、イラスト、動くチャートなどを使って、情報を視覚化した手法である。今回受賞したのは、羅元祺、楊時鈞、黃彥翔、許靜之、翁世航、林奕甫らの制作チームがレポートした「氷とオイルの歌:北極航路、漁業権とエネルギー資源の争奪戦」(A song of ice and oil: The 21st Century Arctic Battle)である。地球の温暖化に伴い北極の氷が溶け、地政学的に状況が変化しようとしている現状をレポートしたものだ。北極点を中心にした地図を作成し、その地図上で従来の航路と北極回りの航路を比較している。また10~20年のスパンで北極圏の温度の変化や一年を通しての航行日数の比較などが詳しくレポートされており、非常に興味深く、おもしろい。後半では北極圏における石油、天然ガス、漁業資源の分布が紹介されている。

 

≪インフォグラフィック報道優秀賞ファイナリスト≫

2011年に発生した東日本大震災についてのレポート、「福島原発事故から10年、除染作業はあとどれくらいで終わるのか」(Fukushima 10 years on)【製作チーム:林奕甫、楊時鈞、黃彥翔、丁肇九、黃筱歡、Nicholas Haggerty】では、主に福島県の原子力発電所について書かれている。今までに汚染水がどれくらい放出されたかを、「50mプール554.2個分」というふうに例えて膨大な量であることをわかりやすく解説したり、汚染土壌の除去量を「台北駅17.8個分」に例えたりして、視覚的にもとても分かりやすい。また、原発事故による放射能漏れが引き起こした食品汚染についても詳細且つ客観的にレポートされており、各国の福島産食品輸入禁止措置解除もグラフで紹介されている。

今年4部門で受賞したことは大きな誇りであり、名誉であるが、製作チームの技術、努力、才能、感性、アイディアが価値ある報道に結び付いたことは間違いない。そして何より、ジャーナリストとしての独自の目線で忖度なしに鋭く切り込むことができたのが、賞を受けた一つの理由だと思う。

 

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