注目ポイント
29日にスペイン・マドリードで開かれるNATO(北大西洋条約機構)首脳会議。注目はNATOに加盟申請しているスウェーデンとフィンランドに対し、唯一加盟拒否の強硬姿勢を崩していないトルコ・エルドアン大統領の出方だ。中東情勢を解説する米ニュースサイト「アル・モニター」は、エルドアン氏の瀬戸際政策が裏目に出る可能性があると分析した。
今回の首脳会議は、スウェーデンとフィンランドが数十年にわたる非同盟政策からの劇的な脱却を計り、NATO加盟プロセスを開始することにより、西側の連帯を再確認し、祝福すべきもののはずだった。
ところが、首脳会議を直前に控えても、エルドアン氏は北欧2国の加盟に反対する立場を維持し、前提条件が満たされない限り、スウェーデンとフィンランドの加盟を拒否すると断言している。NATO条約によると、加盟には加盟国(現在30か国)の全会一致が必要で、1つの国でも拒否権を発動すれば、申請国は加盟できない。
そんな中、NATOの仲介で19〜20日にトルコ、フィンランド、スウェーデンの三者協議がベルギーのブリュッセルで行われたが、結局、「結果を見いだせないまま終わり」、来週の首脳会議で突破口は見つからない公算が大きいとみられている。
同ニュースサイトは、エルドアン氏の瀬戸際政策が2004年のトルコと欧州連合(EU)の会談を彷彿とさせるという。トルコはEU加盟申請の交渉開始期日をEU側に決定するよう迫ったもののラチが開かないことから、当時首相だったエルドアン氏は、議場の席を立つという瀬戸際政策を演じて見せた。
同氏率いるトルコ代表団は、EU側を代表した英国、ドイツ、フランス、イタリアの首脳らと激しい議論を交わした末、議場に戻り、トルコは交渉開始の日程を勝ち取ったという過去があった。
エルドアン氏は、来週のマドリードでも同様のアプローチを取ることも想定され、これまで同氏に冷淡な対応を取ってきた米国のバイデン大統領との会談を求める可能性が高いという。トルコでは「選挙が早まる」と噂され、エルドアン氏は国内向けに米国大統領と渡り合う〝強い国際政治家〟のイメージを必要としているというのだ。
一方、スウェーデンとフィンランドの加盟は、トルコにとって急務な課題ではない。
今回のNATO首脳会議が「フィンランドとスウェーデンの加盟期限ではない」とトルコのカリン報道官は、今週の三者交渉で言い放った。ある情報筋は同ニュースサイトに、「トルコ側は両国の加盟について明確な見通しを示しておらず、マドリードでは激論の応酬になりそうだ」と漏らした。
トルコ側はまた、過去にギリシャが北マケドニアの国名をめぐり両国の関係が悪化したことで、NATO加盟国のギリシャは約10年にわたり北マケドニアの加盟に拒否権を発動したことを引き合いに出した。ただ、同じ拒否権でも背景は根本的に異なる。