2022-06-20 経済

中国がついに初の純国産空母「福建」を進水 高まる台湾や日本など周辺国への軍事圧力

© 中国国営中央テレビ(CCTV)の映像より

注目ポイント

中国が上海で建造していた3隻目の新型空母「福建」が先週末、進水した。純国産空母としては初となる。これにより、習近平指導部は台湾や日本への圧力を強めるだけでなく、南シナ海や太平洋での作戦遂行能力を着実に向上させる。同時に米国との摩擦がさらに激しくなるのは必至だ。

中国の空母は17日に進水した「福建」が3隻目となる。最初の空母は、1998年にウクライナから購入した旧ソビエトモデルを改修した「遼寧」で、その「遼寧」モデルに基づいて造船され、2019年に就役したのが「山東」だ。

米紙ワシントン・ポストによると、「福建」は、米空母のような、短時間での艦載機発進が可能な最先端の電磁式カタパルト(射出機)を備える。これにより、効率的に艦載機を射出することができ、重量の大きい戦闘用航空機を艦載することが可能になるという。これまでの2隻の空母は、フライトデッキのわずかな傾斜を利用して揚力を与える〝スキージャンプ型〟構造に依存していたため、艦載できるのはサイズと重量が限られた航空機だけだった。

ワシントンのシンクタンク、戦略国際問題研究所(CSIS)のマシュー・フナイオーレ上級理事は、「そこで新型カタパルトが効果を発揮するわけで、いわばスリングショット(ぱちんこ)で、飛行機を空に向かって打ち放つような形になる」と解説した。同氏は18年に「福建」の造船が判明して以来、衛星画像を解析し、同空母を研究してきた。

フナイオーレ氏はまた、「福建」の完成により、「さらに大きく、多様性があり、より堅牢な艦隊を持つことも可能になる」とし、これまでの空母には艦載できなかった情報収集する観測機のような航空機も載せることができ、既存の空母で確認された無人航空機の搭載実験も行われるとの見方を示した。

そのため、台湾や日本をはじめ、周辺国にとって「福建」は、中国の新たな軍事的脅威となり、覇権主義・中国の海洋進出をけん制する米国とのさらなる摩擦が生じることは必至だ。

一方、軍事アナリストによると、空母の就役には飛行甲板を完成させ、技術をインストールし、人員とパイロットの訓練など、それぞれの過程にかかる時間にもよるが、少なくとも2年間は必要で、その後、運航を開始する前に数か月の海上での試航海も必要になる。そのため、就役は早くて24年ごろとの見方がある。

ただ、中国国防関係者は国営メディアに、「福建」が実戦配備されるまでには5年が必要だとした上で、同艦が中国にとって遠洋航海できる空母を持つ重要なステップになり、沿海から遠く離れた地域にまでも力を投影することが可能となると主張した。

軍事力の象徴と位置付けられる空母の整備を通じて、秋の共産党大会で3期目を目指す習近平国家主席が大きな実績を誇示した形となった。

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい