2022-06-17 経済

EU薬物汚染 押収量が毎年過去最高を更新 南米からの密輸だけでなく今や欧州内で密造

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注目ポイント

欧州の麻薬汚染が前代未聞ペースで拡大している。麻薬取引や薬物使用が欧州連合(EU)加盟国の間で急増。特にEU内でのコカイン押収量は毎年記録を更新。これまで南米から密輸されていたコカインが、今ではベルギー、スペイン、オランダなどで密造されていることも判明し、関係当局は危機感を強めている。

EUの専門機関、欧州薬物・薬物依存監視センター(EMCDDA)によると、新型コロナウイルスによるパンデミックで厳格化されていた国境管理が緩和され、大量の違法薬物が欧州全土に再び広がりをみせ、コロナ禍前を上回るレベルでまん延している地域も増えてきているという。

これまで数百件単位の違法薬物密造工場が摘発され、新たな向精神物質が毎週のように摘発されていると同センターは指摘。昨年だけでも52種類の同様の物質が検出された。

同センターのアレクシス・グースディール所長は、「2022年における薬物傾向の分析ではっきりしたことは、今や〝どこでも〟〝何でも〟〝誰でも〟という言葉に集約される」と説明。EU人口の29%にあたる、15~64歳までの8340万人が違法薬物を使用したことがあると同センターの調査で判明した。

中でもマリファナが最も多く、昨年だけで2200万人が使用したと回答。コカインや合成ドラッグとして知られるMDMAより多かった。また、約100万人はヘロインやケシから合成された化合物オピオイドを使用したと答えた。同センターによると、現時点で最新データの20年には、EUで約5800人が薬物の過剰摂取により死亡した。

調査によると、コロナ禍ではソーシャルメディアのアプリや暗号化されたメッセージサービスを使って薬物を入手するケースが増加し、その傾向は今後も続くとみられる。

同センターは5月、欧州で20年に押収したコカインの量が過去最高となったと発表。同年のコカイン押収量は214・6トンに達し、前年比6%増で、4年連続で過去最高を更新した。

欧州刑事警察機構(ユーロポル)によると、コカインの密造はこれまでコロンビアやボリビア、ペルーなど南米が中心だったが、ベルギーやスペイン、オランダなどEU内でも密造されていることが判明。欧州で押収されたコカインのうち、これらEU3か国で製造されたものが、全体の約4分の3を占めていた。さらにユーロポルは、イタリアやフランス、ドイツ、ポルトガルでも大量のコカインが押収されており、水際対策では東欧やトルコの港が密輸ポイントになっていると分析した。

一方、ケシを原料とする麻薬ヘロインの取り引きについて同センターは、アフガニスタンで再び政権奪取したイスラム原理主義組織タリバンによる影響を検証するには時期尚早だとしながらも、今度は増加するだろうとの見方を示した。同国では生産や販売が禁止されているにも関わらず、ケシの栽培が盛んに行われているという。

「財政問題を抱えるアフガニスタンは、ヘロイン密輸による収入をより重要視する可能性がある」と同センターの調査報告書は懸念を示した。

また、コカインやヘロインのほかにも、覚せい剤の増加が著しく、EUで20年に押収された覚せい剤は2・2トンに上り、前年比で477%となった。

グースディール所長は、「麻薬の闇市場が、欧州と国際的な犯罪組織の密接なつながりにより多様化し、活発化していることが危機的状況をつくりだしている」と解説。その上で、「かつてないほど薬物がどこでも入手できる状態になっており、暴力や不正に加え、さまざまな健康被害のリスクが高まっている」と述べ、警戒感を強めている。

 

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