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2月24日にウクライナへの侵攻を開始して最初の100日間で、ロシア産化石燃料の輸出額は970億ドル(約13兆円)に上り、戦費を大きく上回ったことが分かった。プーチン大統領は燃料価格を高騰させ、輸出による増収で戦争を継続する狙いだと専門家はみている。
フィンランドのシンクタンク、エネルギー・クリーンエアー研究センター(CREA)が今週発表した報告書によると、ウクライナ侵攻から最初の100日間で、ロシア産原油を最も購入していたのは中国で、130億ドル(約1兆7500億円)にも上った。2位はドイツの126億ドル(約1兆6970億円)が続いた。
同じ期間、フランスはロシア産液化天然ガスの最大輸入国で、ドイツはパイプライン経由で天然ガスを購入した最大国だった。また、日本はロシア産石炭の最大輸入国だった。
西側諸国はロシアに圧力をかけるため、多くの国がエネルギーのロシア依存を削減したことにより、5月のロシアの燃料輸出量は侵攻前と比べて15%減少した。だが、世界的な需要の高まりによる燃料価格の高騰で、ロシアの財源に資金が流入し続けていると同報告書は解説。ロシア産燃料の輸出価格は昨年より平均で60%アップした。
侵攻後100日間で、ロシア産燃料の輸入量が増えた国も中国を筆頭に、フランス、インド、アラブ首長国連邦(UAE)、サウジアラビアなど、少なからずあった。
同期間のロシア産原油の輸出額は480億ドル(約6兆4570億円)で、パイプラインによる天然ガスは250億ドル(約3兆3630億円)、そのほかにも液化天然ガスや石炭などの輸出額が3兆円強となった。
一方、これらの売り上げがプーチン大統領による戦争のための支出を大きく上回るものだとCREAの報告書は分析した。ロシアの財務省の公式データによると、4月は6280億ルーブルが国防費に支出され、これは1日に換算すると210億ルーブル(約444億円)になる。つまり、軍事侵攻開始後、最初の100日間の戦費支出は、単純計算で約4兆4400億円。同期間の燃料輸出額は約13兆円で、大幅なプラス収支となった。
同報告書によると、同期間でロシアの化石燃料の61%を欧州連合(EU)加盟国が購入し、その金額は590億円(約7兆9330億円)だった。
ただ、ロシアは今後、EUへの輸出に頼ることが困難になると米誌ニューズウィークは指摘する。というのも、5月末にEU加盟国は新たな対露経済制裁パッケージに合意した。その一つが年内までにロシア産原油の輸入を90%削減するというもの。
多くの経済専門家は、米国とサウジアラビアに次ぐ世界3位の産油国であるロシアが、EUの制裁に対応するため、新たな輸出先を探すか、もしくは燃料を減産することで高値を維持すると予想している。