注目ポイント
先週末、中国北部・河北省唐山の焼き肉店で、女性客3人らが男数人に殴る蹴るの暴行を受ける事件が発生。その一部始終をとらえた防犯カメラの衝撃映像がソーシャルメディアで拡散し、国民を震撼させると同時に、国内で頻発する女性に対する暴力の実態が再び浮き彫りになった。
事件が起きたのは10日未明。防犯カメラの映像では、3人の女性グループが1つのテーブルを囲んで食事していると、1人の男がグループの女性1人に近づき、性的なちょっかいをかけようとする様子がとらえられている。女性はすぐに男の手を払い除け、突き放そうとするが、逆上した男は女性に襲いかかり、ほかの女性たちが助けに入ると、今度は男の仲間も加わり、ビール瓶で女性を殴るなどの暴行に及んだ。
その間、最初の男が女性の1人の髪をつかんで外に引っ張り出し、路上に投げ飛ばして、頭部を繰り返し踏みつけたり、殴ったりの暴力を加えた。外に出た別の女性も別の男らに引き倒され、路面に後頭部を強打。映像は女性2人が路上でぐったりしている様子をとらえている。だが、約2分間にわたる暴力行為が行われている間、ほかの男性客らはただ傍観していた。
米CNNによると、地元の警察は同日、事件に関与した容疑者を特定したと発表。11日午後には容疑者9人全員の身柄を確保した。うち2人は事件のあった唐山市から約1000キロ離れた江蘇省に逃走し、そこで逮捕されたという。また、主犯の男は過去にレイプや殺人の犯歴があったとも報じられている。
一方、被害者のうち2人は病院に搬送され、手当てを受けたが、命に別状はないという。
防犯カメラの映像が公開されると、すぐに中国最大のソーシャルメディア「ウェイボー(微博)」などSNSで拡散され、香港出身のアクション俳優ジャッキー・チェン(68)はウェイボーで、「怒り心頭だ。悲しいのは、犯行の間、女性だけが互いに助け合うために立ち上がったことだ。周りの男たちは知らん顔だ」と投稿した。
チェンの投稿には200万人以上が「いいね」と送り、約10万件のコメントが寄せられている。
中国でも若い女性を中心にジェンダー問題に関心が高まる中、この事件は、男尊女卑が染みついた男性社会の中国における女性への暴力問題や男女平等の議論を再燃させるきっかけとなりそうだとCNNは伝えている。
今回の事件を受け、中国のソーシャルメディアで広く共有されている国内記事は、「唐山の焼き肉店で起きたことは、ただの地方の事件ではなく、体系的な性暴力だ。男性が女性への暴力に手を染めることを助長し、駆り立てるような社会環境の中でわれわれは生きているということを認識する必要がある」というものだ。
唐山の事件同様、中国では近年、目をそむけたくなるような女性への暴力が繰り返され、その都度、強い怒りを呼んでいる。