2022-06-15 経済

「戦争状態」にある台湾の交通環境(前編)

© Photo Credit: Shutterstock / 達志影像

注目ポイント

生涯のうちに交通事故で1回以上負傷する確率が8割に上る台湾。かつての日本で交通事故の負傷者・死者数が急増し、「交通戦争」という流行語が生まれたように、台湾の劣悪な交通環境を「戦争状態」と指摘する声も多く上がっている。活発な市民社会を持つ台湾の負の側面を、前後編に分けて掘り下げる。

9.交通事故対策 

台湾では、日本に比べ、交通事故に遭う危険を感じる場面が多くあります。最近の台湾警察の統計では、犯罪発生件数よりも交通事故発生件数の方が多くなっており、皆様は日頃から防犯以上に交通事故防止に注意を払う必要があります。…(後略)

【歩行時の対策】 

○ 台湾人のドライバーは、歩行者よりも車両を優先する傾向があり、日本と比べて運転マナーが良くないことを常に意識する。 

○ 時間帯を問わず、青信号であっても横断歩道を渡る時は周囲の車両をしっかり確認する。
○ 歩行者の目の前をギリギリですり抜けていく右折車両には十分に注意する。
○ スクータータイプのバイクを歩道に駐車することが一般的であり、バイクが歩道を走行することもよくあることから、歩道を歩く際でも前後のバイクの走行状況にも注意する。
○ バスやタクシーの乗降車時も、バイクが車両と歩道の間をすり抜けてこないかを確認する。 

(引用:台湾在留邦人安全の手引き,https://www.koryu.or.jp/Portals/0/safetyinfo/台湾在留邦人安全の手引き.pdf ,p 15.)

 

このように台湾の交通環境の危険さは、日本から「お墨付き」をもらっている。

日本以外に、アメリカやカナダなどの公式旅行案内でも、上記のように台湾の交通状況に関する注意喚起が書かれている。

また、香港人であるYouTuberの「ΣSigma二次元解密」は、台湾の交通環境に関して興味深い指摘をしている。彼によれば、台湾では同性婚が合法化するなど、アジアにおいて進歩的な価値観を有していると評価している。しかし、こうした進歩的な価値観に反し、交通インフラは非常に原始的で粗末だと指摘している。

歩道と車道は一体化し、そもそも歩道がないことが多い

歩行者はバイクの間をすり抜ける、外に出かけることはまるで障害物競走のようだ

バイクの使用率は非常に高いが、人々のマナーや交通安全に対する意識は非常に低い

(引用:YouTubeチャンネルΣSigma二次元解密,「香港人眼中的台灣(一): 歷史經濟與文化 【Sigma閒聊】」)

 

また同じように、ジャーナリストの野嶋剛さんも、台湾の交通環境を「戦場」のようだと表現しながら、「台湾の社会倫理、生命尊重、人権いずれもかなり進歩しているが、残念ながら交通の問題だけはまだ社会的病理と後進性が残っている」とその矛盾を指摘している。(https://tw.appledaily.com/forum/20180112/5OU4U3ZSNDDZTOUNYSA72P3YWU/

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