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先週末にシンガポールで行われたアジアや欧米40か国の国防相らが参加したアジア安全保障会議(通称=シャングリラ会合)。ウクライナのゼレンスキー大統領も11日にオンラインで演説し、ロシアが「国際法の体系を含む、人類の歴史のすべての成果を否定しようとしている」と非難した。そんな中、世界に緊張が走ったのは、台湾をめぐる中国国防相による強硬発言だった。
米国のオースティン国防長官は10日、シャングリラ会合に出席するため訪問したシンガポールで、中国の魏鳳和(ぎ・ほうか)国務委員兼国防相と会談。魏氏は、「いかなる台湾独立のくわだても断固粉砕する」とし、「戦争も辞さない」との強硬発言を放ち、各国メディアはその内容を衝撃的な見出しで一斉に伝えた。
フランスの国際ニュース専門局フランス24は、「台湾が独立を宣言すれば、中国は躊躇(ちゅうちょ)なく戦争を始めると明言」との見出しで、台湾をめぐる米中による新たな〝一斉射撃〟の応酬となったと伝えた。また、中東のニュース専門局アルジャジーラも、「中国が台湾をめぐり全面戦争を仕掛けると脅迫」と一報。米CNNは、「中国が近隣諸国を腕づくで抑え、太平洋から資源を強奪している」とするオースティン長官の発言を報じた。
魏氏との会談でオースティン長官は、米国が「一つの中国」政策を維持しているとした上で、台湾海峡の平和と安定の重要性を強調。さらなる台湾への挑発的行為を避けるよう求め、「一方的な現状変更」は認めないと警告した。
今回、中国側から強硬発言が飛び出した背景には、先月、日米豪印4か国の枠組み「クワッド」首脳会議で日本を訪れたバイデン米大統領が記者会見で、「台湾有事に米国は軍事的関与するのか」と聞かれ、「イエス」と即答。続けて、「それがわれわれの決意だ」との意向を示したことに中国が猛反発。魏氏の発言は、バイデン氏の決意表明に対抗したものとみられる。
一方、英紙ガーディアンによると、台湾外交部の欧江安(おう・こうあん)報道官は、中国が主張する台湾主権を「ばかげたこと」と一蹴すると同時に、米国の支援に謝意を示した。同報道官は、「台湾が中国政府の支配下にあったことは、かつて一度もない。台湾の人びとは、中国政府の脅威に屈服することはない」とコメントした。
オースティン氏はシャングリラ会合の基調講演で、「“一つの中国政策”のもと、われわれは台湾関係法に従い、協力を進めていく。それは台湾が十分に自己防衛できるよう支援することも含まれる」と述べた。台湾関係法とは、1979年に制定された米国の法律で、台湾防衛のため軍事行動という選択肢を大統領に与えるというもの。
同氏は、中国による台湾周辺での「挑発的で不安定化につながる軍事行動」を厳しく非難し、中国がアジア太平洋地域でますます侵略的な行動をとる中、米国は同国との緊張状態に対応し、衝突を回避するよう努めていると説明。米国は台湾を含む同盟国のために行動する準備を整えているとした。