注目ポイント
TSMCの最大のライバル、韓国のサムスンは最先端の半導体技術を既に持っているものの、キーポイントとなるのは「量産化」できるかどうかだ。市場が求めるチップを提供できないのであれば、技術だけではTSMCに勝てないが、サムスンがいよいよ動き出した。
先ごろサムスンは、半導体、バイオ医薬品、情報通信などの技術開発を拡大するため、今後5年間での大型投資計画を発表した。なんと450兆ウォン(3560億米ドル、1兆3500億台湾ドル)もの巨額投資をするという。バイデン米大統領に技術デモンストレーションを披露し、巷ではでは「TSMCを意識してのことだ」と騒がれた。
実は、昨年8月の時点で、この巨大な投資計画は表面化していた。当時、この計画の規模はわずか1900億円(5兆6000億台湾ドル)、期限は2024年までとなっていた。しかし、現在ではこの投資計画は拡大されただけでなく、延長もされているのだ。
サムスングループによると、この投資は、最も重要な2つの子会社によって行われるとのことだ。サムスン電子とサムスンバイオロジクスは、このプロジェクトの中核を担っており、今後107万人の雇用機会が増えると期待されている。
その中で最も注目されるのはファウンドリ分野で、サムスン電子が3nmチップの生産を推進することだ。
メインメモリ(RAM)チップの分野で主導的な地位を確立しつつ、チップ設計とファウンドリービジネスを強化することが目的だという。
訪韓中、バイデン大統領は平澤新工場でサムスン電子の李在鎔副社長と会談し、3nm GAA技術の視察を行った。敷地面積は298万平方メートル、サッカー場400面分に近い世界最大の半導体工場の集積地である。
KB国民銀行のアナリストであるジェフ・キム氏は、バイデン大統領に3nm技術を見せたことは、サムスンがTSMCを超えるファウンドリ能力を持つことを示唆するものであったと「Business Korea」に話している。
ジェフ・キム氏はこうも続ける。「世界初の 3nm GAA が平澤工場で生産され、平澤工場が半導体のグローバルサプライチェーンにおいて重要な役割を担っていることを浮き彫りにした。」と。
同時に、同グループは電気自動車のバッテリー分野にも力を入れて、自動車メーカーステランティス(STLA)とサムスンSDI(Samsung SDI)と協力して、将来はアメリカのインディアナ州にバッテリー工場が建設される予定だ。その規模は25億ドルに達し、今年末に着工、2025年にオープンする予定だ。
ウェハー分野でのトップとして安定し、量産技術は依然としてサムスンを超えているTSMC。現在、全世界十大ウェハー工場の昨年の生産値は合計295.5億ドルで、TrendForceの調査によると、TSMCの市場占有率は半分以上で、52.1%に達しており、半導体産業にとって重要な地位を占めている。それに次ぎ、サムスンが18.3%で第2位、さらに、UMCは7%で、3番目に大きい工場である。そして、4番目のGlobal Foundries は6.1%で、第5位のSMICは5.2%、第6位は華虹グループで2.9%、第7位のPSMCは2%を占めており、第8位のVISは1.5%となっている。
台湾の半導体企業Greatek Electronics Inc関係者は、実は先進技術でいうとサムスンはTSMCに引けを取らないが、肝心なのは大規模な「量産」ができるかどうかだと話す。端末市場に必要なチップを提供できずに技術だけでTSMCに勝ることはできない。ムーアの法則(Moore's law)のチップのサイズ縮小は、各チップがより多くのチップを生産できることを意味する。つまり、一つのウェハーがチップを多くカットすればするほど、「コストが低くなる」という意味だ。
業界関係者は「これは切手のようで、1枚の紙から数10枚を印刷し、使用時に1枚または数10枚の切手を使いたいだけ分割で使える」と強調した。そして、これこそがチップ作りの単純な論理なのだ。
しかし、半導体の量産には克服すべき大きな問題がある。それは「リソグラフィ」だ。回路図形を刻印するプレートに「ナノレベルの欠陥」があれば、この欠陥は他の機械に「転印」され、すべてのチップに問題が生じ、さらにナノレベルの除塵技術に合わせて発揮され、これらの連動を止めることができなければ「歩留まり率の向上」を目指すことができない。
そういう意味では現在、サムスンはTSMCのような技術を持っていない。業界関係者は私たちに、例えとして「現在サムスンは一度に10枚印刷できるが、TSMCは一度に100枚印刷でき、さらに塵を除去し、きれいなチップを完成させ、各種の電子製品に問題がないように保証している。これがTSMCが大部分の市場占拠を奪う鍵だ」と話した。
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