2022-06-10 経済

毛沢東以来の長期政権が確実の習近平主席 「密告奨励法」施行で批判勢力一掃目指す?

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注目ポイント

習近平政権が国家総動員による〝スパイ狩り〟を始めた。中国では今週、外国人諜報員やその協力者の検挙につながる情報の提供者に、最大10万元(約200万円)を支給する「密告奨励法」が施行された。この秋、毛沢東主席以来の長期政権となる3期目続投が確実視される習氏。足元を固めるため〝スパイ対策〟という名のもと、批判勢力の一掃が狙いなのか。

中国はこれまでも外国人による諜報活動や、国家安全に対する違反行為を取り締まるため、密告者に報奨金を提供してきた。

習主席は2016年、「われわれは人民のため、人民により、共産党の総力を挙げ、社会全体の力を総動員して国家安全を堅守しなければならない」と宣言した。その翌年、北京市はスパイの情報提供者に50万元(約1000万円)を支給する報奨金制度を導入。すると同年だけで、タクシー運転手から科学者まで、さまざまな人たちから5000件近くの情報が寄せられたという。

つまり、習政権を批判しただけで、それを耳にした周囲の誰かが「外国勢力の回し者」として当局に密告すれば、批判的な人物は拘束される可能性があり、通報者には報奨金が支給されるというシステムだ。このような互いが監視する制度は、独裁国家では歴史的にも繰り返されてきた。中国では毛沢東主席の文化大革命時代に、国民が互いに監視し合い、反体制的な発言をすると収監され、極刑になる人も続出した。

だが、今回の「密告奨励法」の目的について中国の国営メディアは、「報奨制度を確立することで、国家への脅威となる外国人スパイ摘発に国民が協力する動機付けになる」と説明している。

同法は具体的な通報対象を示していないが、国家安全に対する危害防止への貢献度を「一定の効果」「重要な効果」「重大な効果」「特別重大な効果」の4段階に分けて報奨金額を決める。

中国国家安全部の担当官は、「中国の国家安全は複雑で厳しい環境に直面している。特に外国の諜報活動や敵対勢力はさまざまな手段を使って潜入し、諜報活動を激化させ、国境地域を狙っている。それにより中国の安全は脅かされている」と危機感を煽った。

ただ、習氏による国家安全の厳格化は今に始まったわけではなく、主席に就任した翌年から下地作りが行われてきた。

CNNによると、習氏は13年11月、自身を長とする絶対的権力を持つ「中央国家安全委員会」を設立した。15年には防衛、政治、経済、環境、技術、サイバースペース、宇宙開発、文化、思想、宗教など、全ての分野を網羅する国家安全法を導入。ホットラインを設置し、国民が諜報活動を監視し、密告できる制度を設けた。さらに16年4月には「国家安全教育の日」を制定し、西側のスパイに協力しないよう国民に呼びかけるプロパガンダポスターを北京市内のいたるところに掲示した。

また、その翌年には、スパイの可能性のある人物の見分け方を示す非公式文書がソーシャルメディアで拡散され、そこには外国人特派員や宣教師、NGOのスタッフらがスパイの恐れがある対象者になっていたとCNNは伝えた。

さらに、ソーシャルメディアでリベラル派とされるコメンテーターらは国家主義者から〝売国奴〟と判断され、「歩く500K」となじられた。「歩く500K」とは、外国人スパイの活動に協力する者たちのことで、通報すれば北京市から500K(50万元)の報酬がもらえることから、そう呼ばれた。

だが、密告奨励法が施行された結果、今や〝売国奴〟の価値は北京市が支給していた50万元から最高で10万元に激減。CNNは、「価値が下がったのは、売国奴が増えすぎたからだ」とする皮肉が、ソーシャルメディアで広まっていると伝えた。

 

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