2022-06-09 経済

アフリカ発「サル痘」感染者が世界で千人超 WHO「拡大リスクは中程度」の見方変えず

© Photo Credit: Reuters /達志影像

注目ポイント

天然痘に似た「サル痘」の感染者が、世界で1000人を超えた。手や顔に特徴的な発疹が出るほか、発熱、頭痛、リンパ節の腫れといった症状を訴えるというサル痘。アジアではまだ確認されておらず、アフリカ以外で死者はまだ報告されていない。今後、新型コロナウイルスのようなパンデミックが起きる可能異性はあるのか―。

米疾病対策センター(CDC)によると、7日までに欧州、北米、南アメリカ、北アフリカ、中東、オーストラリアなど29か国で1019人の感染が確認され、最も多いのは英国の302人。次いで、スペインの198人、ポルトガルの153人となっている。また、北米ではカナダが80人、米国が30人だ。今のところ、アフリカ以外の国で死者は確認されていない。

米ニュースサイト「ポリティコ」などによると、サル痘は1970年にザイール(現在のコンゴ民主共和国)で初めて報告されて以降、ベニンやカメルーン、中央アフリカ共和国、コートジボワール、リベリア、ナイジェリア、シエラレオーネなど西および中央アフリカで発生した。自然界での宿主は齧(げっ)歯類やサルなどの動物と考えられているが、現時点では不明だ。主に森林地帯で流行しているため、それ以外の場所で人間がサル痘に感染することはまれだった。

WHO(世界保健機関)は今週、現時点で情報収集態勢には限度があるとした上で、「ウイルスがさらに拡大する恐れが高い」としつつも、入院が必要なケースは少なく、感染が「世界的に広がるリスクは中程度」との見方を維持している。ただ、サル痘が風土病となっているアフリカ諸国では死者が継続的に報告され、今年に入って計66人が死亡している。

サル痘はどのように感染するのか。日本の国立感染症研究所によると、サル痘ウイルスの動物からヒトへの感染経路は、感染動物にかまれることや、感染動物の血液・体液・皮膚病変(発疹部位)との接触による感染が確認されている。ヒトからヒトへの感染はまれだが、濃厚接触者の感染や、リネン類を介した医療従事者の感染の報告もある。加えて、患者の飛沫・体液・皮膚病変(発疹部位)を介した飛沫感染や接触感染があると考えられている。

ただ、新型コロナウイルスやエアロゾル感染するウイルスに比べると感染力は強くないという。

同研究所によると、サル痘の潜伏期間は5~21日で、その後、発熱、頭痛、リンパ節腫脹、筋肉痛などが1~5日続き、発疹が出現する。発疹は典型的には顔面から始まり、体幹部へと広がる。初期は平坦であるが、水疱、膿疱化し痂皮化した後、発症から2~4週間で治癒する。

WHOによると、サル痘は天然痘と同じ種類に属するウイルスで、中央アフリカと西アフリカの2系統が確認されており、中央アフリカ系統は西アフリカ系統より感染症状が重く、感染力も強いという。地理的に両地域の中間に位置するカメルーンからは両系統のウイルスが検出されている。

また、アフリカ諸国以外で感染拡大しているサル痘は、西アフリカ系統のウイルスで、致死率は3%以下とされる。一方、中央アフリカ系統のウイルスの致死率は1~10%だが、WHOはこれらの数字はアフリカ諸国で感染した若い世代の統計だとしている。ただ、小児においては高い傾向にあるという。

サル痘のワクチンに関しては、天然痘ワクチンの代用など、いくつか存在している。

同ニュースサイトによると、米国では食品医薬品局(FDA)が2007年に米製薬会社エマ―ジェントが開発した天然痘ワクチン「ACAM2000」や、19年にはデンマークのババリアン・ノルディック社による天然痘とサル痘に有効な成人用ワクチン「Jynneos」を承認した。だが、ACAM2000をめぐっては、心臓や脳の炎症、失明、胎児の死亡など重篤な副作用が報告されているため、使用は限定されている。

では、サル痘ワクチンの接種が必要かというと、WHOは高リスクの環境にいる場合のみ推奨するとしている。

一方、治療法はまだ確立されたものがなく、対症療法のみだ。天然痘の経口治療薬として開発された「テコビリマット」や抗ウイルス薬「ブリンシドフォビル」などが治療薬の有力候補として挙げられている。

だが、具体的にどの動物がサル痘ウイルスを媒介し、感染拡大を引き起こしているのか、どのような治療が最も有効なのか、どう感染が広がるのかなど、ウイルスの基本的特徴さえまだ解明されておらず、今後のさらなる研究に期待が集まる。

 

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