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ウクライナへのプーチン露大統領による「特別軍事作戦」がすでに100日を超え、ロシア国内の都市部では以前の日常生活を懐かしみ、うつ状態に陥る人たちが日ごとに増えているという。米紙ワシントン・ポストは、プーチン氏が恐れるのは、そんな国民の絶望感だと指摘した。
「ロシアで都会に住む中流階級層にとって、ウクライナ戦争は全ての計画を台無しにした。待ち望んでいたバケーションは取り止めになり、お気に入り海外ブランドの洋服などのショッピングという楽しみを奪い、日本製の新車に乗ったり、ビッグマックを食べることさえ今や不可能となった」とワシントン・ポスト紙は報じた。
戦争が長引く中、ロシアの侵略をめぐり外国企業が撤退し、物価は急騰。そんな中で侵攻前の日常生活を多くの人が懐かしんでいる。同時に、プーチン氏はこれまでのように、ロシアが勝つまで戦争を継続することも分かっているのだ。
同紙によると、「ウクライナ人をナチスから解放するために戦争は必要」だと大多数のロシア国民を説得した国営テレビのプロパガンダは、今度は戦争が長引くことを覚悟させ、不吉にも最後は核戦争で終わることすら警告している。これはウクライナにとって、さらなる市民の犠牲や、家屋の破壊、毎日数十人という東部で国を守る兵士の死を意味する。
これに比べれば、ロシア人の困難さなどささいなことだが、長期戦が人々にもたらす暗闇をプーチン氏は恐れていると専門家は分析する。それは西側による経済制裁が効き、経済は縮小し、物価上昇は止まらず、国民はもう元の生活には戻れないという絶望感を抱き始めることだという。
だが、「西側がロシアを飲み込もうとしている」と危機感をあおるクレムリンの常とう手段のプロパガンダは今のところ、まだ効果的なようだ。
ロシアの独立系調査会社レバダセンターによると、5月下旬に行った最新の世論調査では、77%のロシア人が戦争を支持し、4月に行われた前回調査の74%を上回った。世代別では18~24歳の60%、55歳以上では83%が戦争を支持した。ただ、44%はこの戦争が長期化し、少なくとも今後6か月は続くだろうとしている。
同社のデニス・ボルコフ氏は、「ロシア人は世界のほとんどが敵で、ロシアを守っているのはプーチンだとみており、プーチンなくしてロシアは完全にやられると認識している。彼らにとってロシアは自国の防衛戦争だととらえている」と調査結果を分析した。
ワシントン・ポスト紙がインタビューした語学教師のマリーナさん(57)は、友人らとは戦争の話は避けているとし、「一般的に、誰もが戦争だか特別作戦だかに辟易している。それぞれ問題を抱えていて、特に問題なのは、値上がりが続く中でどうやってサバイバルするか」だと明かした。