2022-06-07 世界

米英がウクライナに遠距離ロケット砲供与へ プーチン氏「新たな対象攻撃する」と猛反発

© Photo Credit: Reuters /達志影像

注目ポイント

米英が連携して進めるウクライナへの多連装ロケット砲の供与をめぐり、ロシアのプーチン大統領は、「これまで標的としていなかった対象を攻撃する」として、強く反発。5日には再びウクライナ首都キーウ近郊に遠距離ミサイルで攻撃し、西側の動きをけん制した。多連装ロケット砲とはどういう武器なのか。

プーチン氏は5日、ロシア国営テレビに出演し、「もしロケットシステムが供与されれば、われわれは潤沢な武器を使って、これまで攻撃していなかった対象を攻撃する」と脅迫。「私の見解では(供与の)目的は一つ。軍事衝突をできるだけ長引かせることだ」と述べ、米英が意図的に戦闘を長期化させていると主張した。

バイデン米大統領が先月末に発表したのは、射程80キロの多連装ロケットシステム(MLRS)と高機動ロケット砲システム(HIMARS=ハイマース)などをウクライナに提供する7億ドル(約915億円)の追加軍事支援パッケージだ。これらの兵器により、遠距離から正確に標的を攻撃できるようになる。

MLRSとは、長射程の阻止砲撃用として米陸軍が開発した自走式多連装ロケット砲で、正式名は「M270」。ロケット弾なら12発を発射でき、敵が射撃位置を特定する前に別の場所に移動することができる足回りの良さを特徴とする。米国、英国、日本や韓国、イスラエルなど13か国に配備されている。

また、同じく米陸軍が開発したハイマースはMLRSの小型版で、迅速な輸送が可能な装輪式自走多連装ロケット砲。正式名は「M142」。空挺部隊と海兵隊、迅速な輸送で軽歩兵師団が導入している。

そんな中、ウクライナ東部ドンバス地方のルガンスク州では、し烈な攻防戦が繰り広げられ、同州のハイダイ知事は6日、ルガンスクの要衝セベロドネツクでウクライナ軍が再び劣勢に立たされていることを明らかにした。同時に、セベロドネツクに隣接するリシチャンスクへの砲撃も激化しているという。

激しい砲撃戦で、ウクライナ軍は米国から供与された「M777」155ミリ榴弾砲を多用しているが、射程距離が30キロと短く、旧ソ連時代に開発された多連装ロケット発射機「ウラガン(220ミリ)」や「スメルチ(300ミリ)」でもっと遠くから攻撃してくるロシア軍に届かないため、ゼレンスキー大統領は西側に対し、早急な長距離砲の軍事支援を求めていた。

だが、ロシア軍のウラガンやスメルチに対抗できるMLRSやハイマースの供与に関しては、これまで米国や西側は躊躇(ちゅうちょ)してきた。その理由はこれらの兵器の優位性だ。

軍事専門家によると、MLRSやハイマースは多連装ロケットというより、事実上の地対地ミサイルで、弾薬である227ミリのロケット弾は誘導ミサイル化し、より正確な攻撃力を持つ。加えて、短距離弾道弾の一種「ATACMS」(射程300キロ)の発射も可能なため、ロシアにとっては、ドンバス地方をはるかに超えてロシア領内も攻撃対象になることから、相当強い反発が予想された。

実際、プーチン氏は5日に「これまで攻撃しなかった対象を攻撃する」とし、対抗姿勢をエスカレート。そのため、米英はATACMSではなく、射程が80キロと短い227ミリロケットのみをウクライナに送るとみられる。

バイデン氏は米紙ニューヨーク・タイムズへの寄稿で、MLRSなどの供与の目的を、ドンバス地方での「ロシアの進軍を阻止するため」と強調。「国境を越える攻撃をウクライナ軍に促したり、可能にはしない」と述べ、ロシアへ過度の刺激をしないよう一定の配慮を示した。

ロイター通信によると、米国と連携してMLRSを供与する英国のウォレス国防相は6日、ロシアの戦術に応じて英国の対ウクライナ支援も変化すると説明。「ウクライナはこの多連装ロケットシステムにより、ロシア軍が無差別的に使用している長距離砲に対し自衛力を高められる」と述べた。

 

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