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コロナ禍により幾度もの延期の末、2年越しに公開された新作映画「トップガン マーヴェリック」。1986年の第1作「トップガン」から、実に36年ぶりとなる続編のリリースに、北米ではオープニング週末3日間の興行収入が、トム・クルーズ主演作として過去最高の1億2670万ドル(約165億円)を記録。世界でも同様に3億2000万ドル(約418億円)の収入となった。米紙ワシントン・ポストは、この成功が長らく中国に依存してきたハリウッドの転換点になると指摘した。
中国からの資金が消え、同国での配給も不確実になったことから、「どこかで誰かが、うま味が無くなったのならマーヴェリックのジャケットを元通りにしよう」となったようだとワシントン・ポスト紙のバンチ氏は説明。結局、中国への配慮により内容が損なわれたハリウッド作品に辟易していた米国の映画ファンにとって、トップガンは良心を取り戻すよい機会にもなったと続けた。
同氏によると、今年1月に封切られたマーベルの大ヒット作「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」でも、あわや映画が台無しになるような注文が、中国側からソニー・ピクチャーズに対してあったという。同作のクライマックスのシーンに登場する、米国の象徴でもあるニューヨークの自由の女神像を削除するよう申し入れてきたというのだ。
製作側は作品そのものに対する否定とも取れる要望を拒んだが、ソニーとパートナーであるディズニーは、結果的に中国市場を気にする必要はなかった。というのも、同作はコロナ禍以降、空前の大ヒットとなり、米国内だけでも8億ドル(約1000億円)以上を売り上げ、世界を加えると18億9000万ドル(約2473億円)という破格の成績を記録したからだ。
先月封切られたディズニー配給のマーベル作品「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」も中国公開なしで、すでに世界の興行収入は9億ドル(約1177億円)に達している。
バンチ氏は、「トップガン マーヴェリック」や最新のマーベル2作品が示すように、中国市場を失うことは、決して恐れていたほどの痛手ではないことが分かったと指摘。中国市場を意識するあまり、「アメリカの魂を売った」と批判されたハリウッドは今、米中関係悪化に伴うチャイナパッシングでも十分に売り上げを伸ばし、再び自信を取り戻しつつある。
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