2022-06-06 アジア

新作「トップガン」の記録的大ヒットが証明 ハリウッドが中国パッシングにシフトチェンジ

© Photo Credit: Shutterstock / 達志影像

注目ポイント

コロナ禍により幾度もの延期の末、2年越しに公開された新作映画「トップガン マーヴェリック」。1986年の第1作「トップガン」から、実に36年ぶりとなる続編のリリースに、北米ではオープニング週末3日間の興行収入が、トム・クルーズ主演作として過去最高の1億2670万ドル(約165億円)を記録。世界でも同様に3億2000万ドル(約418億円)の収入となった。米紙ワシントン・ポストは、この成功が長らく中国に依存してきたハリウッドの転換点になると指摘した。

もともとは2020年夏の封切りが予定され、19年には最初の予告編が解禁となり、往年のファンも〝36年後のトップガン〟への期待が高まった。ところが、予告編で話題を集めたのは、クルーズ演じる主人公マーヴェリックお気に入りのレザージャケットの背中のワッペンだった。1作目でも登場したそのジャケットからは、米軍との友好を示す台湾と日本の国旗のワッペンが消え、その部分には似たような色合いだが、全く違った図柄のワッペンに変わっていたのだ。

気づいたファンの多くは、「中国のIT大手テンセントがこの作品に出資したことから、中国を忖度して台湾と日本を象徴するワッペンを外した」などとし、改めて〝大スポンサー〟中国にハリウッドは買収されたと波紋を呼んだ。

ところが5月27日、実際に公開された本編では第1作同様、ジャケットには台湾と日本の国旗のワッペンがあったのだ。映画専門サイト「シネマトゥデイ」は台湾の三立新聞網を引用し、「先行上映会でこのシーンを目にした台湾の観客は、拍手喝采だったといい、『多くの台湾の観客が感動し、驚き、大いに喜んだ』」と伝えた。

この変更について製作側はコメントしていないが、実はこの作品、中国では公開されていないのだ。ワシントン・ポスト紙のコラムニスト、ソニー・バンチ氏は、「米国の映画会社は、中国のご機嫌取りや中国人客を頼りにしていたが、本来何を優先するべきかを考え直す時が来ている」とハリウッドに忠告した。

同氏は、「トップガン マーヴェリック」」が世界市場でオープニング週に売り上げた3億ドルは、すでに製作費1億7000万ドル(約222億円)の75%に値する利益を生んでいるとし、「これは最近では相当大きな数字だ」と強調。「ここで指摘する重要なポイントは、(配給の)パラマウント・ピクチャーズと(制作会社の)スカイダンス・メディアが、中国から一切の売り上げ抜きで、これを成し遂げたということだ」と付け加えた。

さらに米芸能サイト「デッドライン」は5日、同作は公開10日間の世界売上が5億4860万ドル(約716億円)に達したと報じた。

一方、米紙ウォール・ストリート・ジャーナルのハリウッド担当エリック・シュワーツェル記者によると、台湾と日本のワッペンが本編でよみがえったことに加え、エンドロールのクレジットにテンセントの名前が入っていないことを確認したという。

「テンセントの幹部たちは、このパラマウント・ピクチャーズの事業から撤退したが、その理由は、米国の軍事力を見せつける映画に同社が関与して中国共産党から怒りを買うことを恐れたためだと事情通は話している」(シュワーツェル記者)。

中国からの資金が消え、同国での配給も不確実になったことから、「どこかで誰かが、うま味が無くなったのならマーヴェリックのジャケットを元通りにしよう」となったようだとワシントン・ポスト紙のバンチ氏は説明。結局、中国への配慮により内容が損なわれたハリウッド作品に辟易していた米国の映画ファンにとって、トップガンは良心を取り戻すよい機会にもなったと続けた。

同氏によると、今年1月に封切られたマーベルの大ヒット作「スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム」でも、あわや映画が台無しになるような注文が、中国側からソニー・ピクチャーズに対してあったという。同作のクライマックスのシーンに登場する、米国の象徴でもあるニューヨークの自由の女神像を削除するよう申し入れてきたというのだ。

製作側は作品そのものに対する否定とも取れる要望を拒んだが、ソニーとパートナーであるディズニーは、結果的に中国市場を気にする必要はなかった。というのも、同作はコロナ禍以降、空前の大ヒットとなり、米国内だけでも8億ドル(約1000億円)以上を売り上げ、世界を加えると18億9000万ドル(約2473億円)という破格の成績を記録したからだ。

先月封切られたディズニー配給のマーベル作品「ドクター・ストレンジ/マルチバース・オブ・マッドネス」も中国公開なしで、すでに世界の興行収入は9億ドル(約1177億円)に達している。

バンチ氏は、「トップガン マーヴェリック」や最新のマーベル2作品が示すように、中国市場を失うことは、決して恐れていたほどの痛手ではないことが分かったと指摘。中国市場を意識するあまり、「アメリカの魂を売った」と批判されたハリウッドは今、米中関係悪化に伴うチャイナパッシングでも十分に売り上げを伸ばし、再び自信を取り戻しつつある。

 

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