注目ポイント
日台のエグゼクティブにインタビューするThe News Lens Japanの連載企画。貸会議室大手ティーケーピーは、昨年、台湾台北市で大型レンタルオフィス・コワーキングスペース事業を始めた。リーマンショック、3.11、コロナ禍と、大きな危機を乗り越えてきた河野貴輝社長の確信と決意とは
街を歩けばあちこちで目につくテナントのいなくなった商業ビル。夜になれば下の店舗は営業しているものの、上の階は電気が消えて真っ暗になっている。そんな建物を活用できないものかと考え、2005年にティーケーピー(TKP=本社・東京都新宿区)を起業したのが河野貴輝社長(49)だ。
取り壊しが決まっているビルや、ビルの空きスペースなどを期限付きなどで借り上げ、貸会議室として再利用し運営する。借り手のなかったビル所有者にとっても、短中期的に会議スペースが必要な企業にとってもウィンウィンの関係だ。河野氏は、そんなマッチメイクを可能にする〝空間シェアリング〟という新たなビジネス分野の先駆者としてTKPを成長させてきた。
慶応大学卒業後、伊藤忠商事に入社した河野氏は、為替証券部を経て、日本オンライン証券(現auカブコム証券)やイーバンク銀行(現楽天銀行)の設立に参画。その後、2005年に32歳の若さで、証券や金融とは畑違いのTKPを立ち上げた。
きっかけとなったのが、東京・六本木で取り壊しが決まっていた古い3階建てビルだ。1階のレストランだけが営業し、2階と3階は空き状態。ビルオーナーから解体までの期間、上階を有効利用する方法を相談され、借り上げたのがTKP第1号の貸会議室となった。それから17年。今や全国に2500室以上の貸会議室や宴会場を展開する。

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派生ビジネスで経営多角化
では具体的に、企業はその〝空間〟をどのように利用しているのか。
「社内の会議から社外の会議、イベントとか新入社員研修、(採用)内定者の内定式や採用試験などでの利用も多い」と河野氏は説明する。その過程で派生したビジネスにも着手し、経営は多角化している。
「貸会議室というのはプラットフォームですから、その上に乗っかってくる食べ物とか飲み物などケータリング、また机や椅子に始まって、プロジェクターやスクリーンなど会議をする上で必要なものまでTKPが行っています」と河野氏。また、株主総会などでは会場から外部へのオンライン配信サービスにも注力している。
そんな中で着手した事業の一つが宿泊施設だ。例えば、使用されていない企業の保養所や研修センターを借りて、宿泊研修施設として利用者に提供するというもの。さらに、あるアパホテルの宴会場やレストランをTKPが運営したことがきっかけで、09年から同ホテルチェーンとのビジネス関係が始まった。その後は客室の清掃を含め、ほぼ全てのホテル業務に携わり、「やったことがないのはフロント業務だけだった」と河野氏。