2022-06-03 観光

時代をまたぐ台湾の若者たちの“ラブ・スポット”とは… 90年代の西門町の古き良き時代のデートシーンを再現

© 林特

注目ポイント

台北で生まれ育った人なら、世代に限らず一度はデートで訪れる西門町。今も若者を中心に多くの人を惹きつける台北随一のカルチャーの発信地ですが、スマホやSNSも存在していない1990年代にはどんな街だったのか。 理由は分からないが、西門町は永遠に若者をひきつけ、台北に住む老人は皆、西門町にまつわる自分のラブストーリーをもっているはずだ。

 

文:林特

このテーマで執筆し始めた頃、若い頃のデートコースを思い返すことに少し恥ずかしさを感じた。高校時代、ポケットには限られた小遣いしかなく、門限の関係で遊ぶ時間も限られていた。そんな窮屈な状況の中で、どの高校生も自分なりの青春の過ごし方をしていた。

西門町は不思議な場所だ。70歳でも30歳の人でも、若い頃に台北のどこでデートしてたか? と聞くと、世代を超えて、答えはだいたい「西門町」だ。食べ歩きのできるB級グルメ、最新の流行、映画館街、タトゥー街、アメリカ街、古いレコード店、古い雑誌店など様々なエキサイトメントが集まっているからだろう。

今回は、年齢がバレるのを覚悟で、90年代の感覚を呼び戻しながら、西門町でデートするならどこがいいのか、当時のお店はどこが残っているのかを紹介しようと思う。
 

© 林特


あの時代、MRTの6番出口なんてものがなかった頃は(早速年寄り風を吹かせる)、板南線の影すら見えなかった。当時は悠遊カード(台湾の地下鉄電子カード)で淡水線を利用するのがトレンドだったし、ポケットベルもまだ使われていたので、今よりもずっと待ち合わせ相手を見つけるのが難しかった。

当時、ここは「西門町サークル」と呼ばれていた。東京・渋谷のハチ公前のように、人混みが永遠に絶えることのない場所。デートの有無にかかわらず、ナンパ目的の人も大勢集まる場所だ。だから永遠に人でいっぱいで、状況は今とほとんど変わらない。


西門町に来るときは、台北駅から歩いてくる人も、うっかり(?)中正地区の偏差値の高い公立高校に通ってしまった人も、授業が終わると南から歩いてきて、当時の西門マクドナルド、つまり今のH&Mがある場所で待ち合わせるのだ。

西門サークルのマクドナルドには都市伝説的な話があるが、ここでは言及しないので興味のある方はご自分でグーグル検索をしてほしい。そして、ここで待ち合わせをする人には、ぜひ隣の「成都スターフルーツドリンク」を買って、甘酸っぱいドリンクを飲みながら、オールドスクールなデートを楽しむことをお勧めする。
 

© 林特


古着男と109ギャルの親密な触れ合い

90年代の西門町には、主に2つの流行の柱があり、一つは安室奈美恵が起こしたギャルブームだ。当時、路面ではいたるところでルーズソックスと厚底ブーツが販売されていた。ルーズソックスはもちろん緩ければ緩いほど、靴底は厚ければ厚いほど良しとされ、女子高生は皆9頭身のプロポーションを目指していた。もう一つの流行は、お香の香りが漂う古着屋「達新美」や「丁丁園」だ。ようやく貯めたお小遣いを握りしめて、アディダスのヴィンテージスニーカーや、オレンジラベルのついたリーバイスのパンツを買いに行ったりした。

かつて西門町の象徴だった「達新美」は、今は姿を消した。しかし、「丁丁園」はまだ万年ビルに残っている。店は小さくなってしまったが、もしまたオレンジマークのジーンズを探したいなら、いつか訪ねて、老舗古着屋特有の8番のお香の香りも感じてほしい。

© 林特



そして、よりトレンディで懐の暖かい人は、万年ビルの隣にある「西門新宿」や、成都路の「小香港」へどうぞ。この2つの建物は海外から「個人」が持ち帰ったセレクト品がいっぱいで、日本、香港、欧米から来たブランド品や、デザイナーズブランドの服などが多数ここに集まっている。こういう小さな店で宝物を掘り出すのは、多くのオシャレ番長の子供の頃の共通の記憶でもある。

「西門新宿」で印象的だったのは、入口にある小さなタバコと雑誌の屋台で、ファッションの最先端を行く人たちは、タバコにもこだわりがあったのだ。


当時、タバコ屋台ではまだ台湾で代理販売していないLucky Strikeを販売しており、売れ行きが良く、よく品切れになっていた。雑誌屋台には当時、最も人気のあった香港雑誌と日本雑誌が並べられており、「香港Milk」を買わなければ、時代遅れに思えてしまうほどだった。


「西門新宿」と「小香港」は、今では当時の面影はなく、不況の影響で店もだいぶ減ってしまった。しかし、若い頃に見た伝説のタトゥー師大毛は、今も西門新宿で営業している。西門町へ行くことがあれば、懐かしい階段を登ってそぞろ歩きを楽しむことができる。

© 林特


また、「阿緑的店」は当時のJKが必ず訪れる店であり、流行を取り入れた服や「non-no日本スタイル」が多く、価格の安さからも女子高生に人気があった。 奇跡的に、「阿緑的店」は今も営業していて、峨嵋駐車場の隣に引っ越したものの、客層は依然として女子高生である。


西門町で一番おもしろかったのは、ここに来るカップルは2人とも同じスタイルをしていたことだ。たぶん今でもそうだ。小花柄をまとったカップル、アメリカンレトロカップル、ヒップホップカップル、パンクカップルなど、異なるサブカルチャーの若いカップルが、台湾風煮込みを食べながら、チケットを買うために列を作る光景が見られる。ここでは、常に自分の居場所を見つけることができるのだ。

© 林特



オールドスクールなミュージシャンの耳を求めて


雑誌を読んだり、レコードを買ったりするのが好きな若い恋人同士なら、西門町で一日の大半を過ごすことができる。「西淘」と呼ばれるタワーレコード店は、今ではなくなってしまったが、中華路の「佳佳レコード店」と、路地に隠れている「九五樂府」は、今でも特別な時間を提供してくれる。

まず「佳佳レコード店」は、レコードマニアのパラダイスだ。日本や韓国のアイドルから、ヨーロッパ、アメリカの古いロックやジャズのレコードまで、人気のあるジャンルはすべてここで見つけることができる。近年「佳佳レコード店」は3階の売り場をリニューアルし、レコードのテイストが好きな音楽ファンのために、より多くの選択肢を提供できるようにした。また、実際に音を聴くことができるエリアもあり、好きな音楽を好きな人と共有し、デートの記念にレコードを持ち帰るという、昔ながらのロマンチックな体験ができる。
 

© 林特


そして、見た目のボロさで侮ることなかれ。「九五樂府」は、より「プロフェッショナル」な分野の音楽を専門に扱っている。インターネット通販がなかった時代、ラジオや雑誌で知った音楽アルバムが、普通のレコード店ではなかなか手に入らないことがあった。そんな時、要領のいい人は、「九五樂府」に駆け込む。そんな事情から、かつての「九五樂府」には、いい音楽を求めるダンサーやミュージシャンがたくさんいた。現在もアニメや映画・ドラマのアルバムから、日本や韓国のアイドルまで、様々なジャンルを取り扱っている。店内にはギターやピアノの楽譜、専門的な音楽雑誌も充実しているので、思い出に浸りたい人も、探し物がある人も足を運んでみてはいかがだろうか。

© 林特

1回チケットを買ったら、どこまでも楽しむことができたビル

かつて高級映画館「国際館」としても知られた万年ビルは、実はチケットを買わなくても入ることができるのだ。館内には一日中楽しめるほどの飲食店があり、まるでアミューズメントパークのようだ。1階のショッピングモールは、今となっては大したことないように見えるが、90年代の高校生にとっては、香水カウンターで人気の「CK one」を買い、奥のコーナーでCASIOの最新腕時計「Gショック」の在庫をチェックする。それは、なかなか「イケてる」コースだった。

© 林特

エスカレーターで2階、3階に上がると、色とりどりのコンバースのスニーカーが出迎えてくれる。 このフロアは、スニーカーやジーンズ、アニメ関連のショップがほとんどで、懐が寂しい学生にとっては、流行品を見つけるのに絶好の場所だ。4階にある模型やおもちゃショップは、多くの人が西門町に買い物に来る理由にもなっている。店内に模型やおもちゃが山積みになっているからといって、ただ買い溜めしただけの店、と思うことなかれ。彼らのおもちゃを集める知識はピカイチで、初代ガンダムのフィギュアや聖闘士星矢の神話、半等身サイズのマジンガーZの置物などまで見つけることができるのだ。
 

© 林特


このフロアはおもちゃマニアの天国だけでなく、ずらっと並んだガチャポンの後ろには古くから営業している「雜誌瘋」がある。この老舗雑誌店は、取り扱ってる雑誌の種類が他の店とは少し違う。より多彩なモデル写真集、特殊趣味の専門雑誌、アニメ関連の原画集、そして18禁専用エリアがある。店内撮影は禁止されているが、カウンターで雑誌を試読することもできる。「アニメイト」がまだ台湾に上陸していない頃、アニメマニアにとっては小さな天国だった。

5階は「トムズワールドゲームセンター」だ。ここはデパートにある子供の遊び場というより、若者のデートスポット、あるいは大人になりたくない人たちが安心して遊べる小天国のようだ。90年代に流行したダンスマシンや、大型のストリートファイター「ザ・キングオブ・ファイターズ」、そして日本のゲームセンターで流行した様々なカードゲームがある。ここに来てデートする時にはテーブルホッケーをお勧めする。ゲーム後の火照った体が、恋愛気分を一気に上昇させるだろう!

遊び疲れたら、座って食べて、飲んで…。万年ビルの地下1階には、各種の古い飲食店がある。必ず頼んで欲しいのは、「金園排骨」の春巻きと、開店以来揺るぎない人気のお得ステーキ。また「青蛙下蛋」は、料理の値段からおいしさまで、高級志向の信義地区の価値観とは正反対にある。そのため、昔から若者のデートスポットとして注目されている。

© 林特



映画を見ながらアヒルの舌を食べる


まだ信義威秀(大手の映画館)がなかった時代には、西門町で映画を見るのが一大イベントだった。そして今でも国賓、楽声、日新、豪華といった台北トップの大型映画館が並んでいる。以前ほどの人気はないものの、今でも多くのメジャーな映画プロモーションがここで行われている。

© 林特



90年代は、映画デートの際に、ポップコーンやコーラはあまり好まれておらず、また、好きな食べ物を持ち込むことも規制されてはいなかった。当時、誰もが台湾風煮込みを手にしながら映画を鑑賞していたが、今のように大鍋で加熱した煮込みとは違い、味付けして冷ましたものだった。屋台の小さなガラス棚には、鶏の爪、鶏の砂肝、鶏の首、ぼんじりがきちんと並べられていて、まるで狩猟の宝箱コレクションのようだった。映画館の数も多く、台湾風煮込みの需要も高かったので、当時は香港のスターも「天禄鴨舌」のアヒルの舌を買うために台湾に飛んできたそうだ。今でも休日になると長蛇の列ができる。
 

© 林特


インスタ映え店で写真を撮るより、レトロな西門町を楽むべき

西門町で数十年前のデート気分に戻りたいなら、地元の飲食店で腰を据えて食べるのが必須だ。台式日本料理を専門とする「美観園」は、1960年代からずっとデートにはうってつけの場所だ。インスタ映えを狙った小洒落た内装はないが、レトロな雰囲気の中で美味しい料理を楽しむことができる。中でもケチャップオムライスは大いにお勧め。ぜひ濃厚な昭和感を感じてほしい。

© 林特



「阿宗麵線」は西門町から発生したグルメでもある。以前は、店内に食べる席がなかったので、騎楼(台湾で多く見られる半屋外の歩行空間)の隣に立ったり、店の近くにしゃがんで食べる人の姿があちこちで見受けられた。当時は、大勢の人が集団で麺線を食べる光景もよく見られたが、今ではそのような熱い雰囲気はなくなってしまっている。

学生たちが一番好きな、万年ビルB1「金園排骨」のカルビご飯、そして、「玉林鶏脚大王」の鶏ももご飯。いずれの店も3代目となり、今でも根強い人気がある。西門町に来たら、デートでもそうでなくても、ぜひここで食事をしてみてほしい。

また、「賽門甜不辣」も西門町に来たら必ず訪れてほしい店だ。日本からやってきた“おでん”料理店だが、その店名が気になる人も多いのではないだろうか。その由来については、イギリス人俳優のロジャー・ムーアが演じた「七海遊侠:The Saint」からきたという説がある。劇中の主人公の名前がSimon Templar(店名と同じ発音)なのだ。当時とても人気だったこのキャラクターは、台湾の50代〜60代にとっては共通の思い出であり、時代の流れに乗って、店名も「賽門甜不辣」と名付けたといわれている。

その他にも、西門町に現存する古いグルメはたくさんある。「謝謝魷魚羹」、「天天利小吃」、「木瓜牛奶」、路地裏にひっそりとある「牛肉麵」等。西門町のとびきりのグルメがどこにあるのかを事前に知っておくことで、デートの行程をよりスムーズにし、瞬く間に恋愛の温度も高まるはずだ。

© 林特



ここで少し「休憩」を挟もう»
「U2」と「瘋馬」と格安旅館

以前、インターネットで「若い頃のデートで西門町のどこに行きましたか?」と質問したところ、10件のうち8件が「U2」という回答であった。「U2」と「瘋馬」は、ビリヤードが盛んになった90年代、西門町で人気の憩いの場で、ビリヤード場とMTV(カラオケ)があった。学生にとっては言わずと知れたデートスポットだ。

© 林特


家庭用プロジェクターやハイビジョンプレーヤーがまだ普及していない時代、MTVはプライベート映画館のようなサービスを提供していた。小さな個室、エアコン、おかわり自由、300元ちょっとで映画1本相当の「休憩」時間が楽しめるとあって、当時は多くの若者に人気があった。しかし、これらの部屋は公共の場として識別されているため、映画の興奮にまかせてラブラブ行為に突入するのは得策ではない。


もちろん数十年来、若者のデートスポットとして名を馳せた西門町には、路地に隠れて「真面目に休憩」できる場所もたくさんある。このような「QK(休憩)」ができる旅館経営者は、誰に対しても平静な対応をするので、チェックインの時には恥ずかしがらずに希望の部屋タイプを言えば問題ない。

スピード重視の時代だからこそ、ネットやデジタルに頼るのではなく、暖かみのあるデートをアレンジすることが、恋愛を発展させる一番のきっかけになるのかもしれない。

 

〈続けて読みたい記事〉