注目ポイント
台北で生まれ育った人なら、世代に限らず一度はデートで訪れる西門町。今も若者を中心に多くの人を惹きつける台北随一のカルチャーの発信地ですが、スマホやSNSも存在していない1990年代にはどんな街だったのか。 理由は分からないが、西門町は永遠に若者をひきつけ、台北に住む老人は皆、西門町にまつわる自分のラブストーリーをもっているはずだ。
文:林特
このテーマで執筆し始めた頃、若い頃のデートコースを思い返すことに少し恥ずかしさを感じた。高校時代、ポケットには限られた小遣いしかなく、門限の関係で遊ぶ時間も限られていた。そんな窮屈な状況の中で、どの高校生も自分なりの青春の過ごし方をしていた。
西門町は不思議な場所だ。70歳でも30歳の人でも、若い頃に台北のどこでデートしてたか? と聞くと、世代を超えて、答えはだいたい「西門町」だ。食べ歩きのできるB級グルメ、最新の流行、映画館街、タトゥー街、アメリカ街、古いレコード店、古い雑誌店など様々なエキサイトメントが集まっているからだろう。
今回は、年齢がバレるのを覚悟で、90年代の感覚を呼び戻しながら、西門町でデートするならどこがいいのか、当時のお店はどこが残っているのかを紹介しようと思う。

© 林特
あの時代、MRTの6番出口なんてものがなかった頃は(早速年寄り風を吹かせる)、板南線の影すら見えなかった。当時は悠遊カード(台湾の地下鉄電子カード)で淡水線を利用するのがトレンドだったし、ポケットベルもまだ使われていたので、今よりもずっと待ち合わせ相手を見つけるのが難しかった。
当時、ここは「西門町サークル」と呼ばれていた。東京・渋谷のハチ公前のように、人混みが永遠に絶えることのない場所。デートの有無にかかわらず、ナンパ目的の人も大勢集まる場所だ。だから永遠に人でいっぱいで、状況は今とほとんど変わらない。
西門町に来るときは、台北駅から歩いてくる人も、うっかり(?)中正地区の偏差値の高い公立高校に通ってしまった人も、授業が終わると南から歩いてきて、当時の西門マクドナルド、つまり今のH&Mがある場所で待ち合わせるのだ。
西門サークルのマクドナルドには都市伝説的な話があるが、ここでは言及しないので興味のある方はご自分でグーグル検索をしてほしい。そして、ここで待ち合わせをする人には、ぜひ隣の「成都スターフルーツドリンク」を買って、甘酸っぱいドリンクを飲みながら、オールドスクールなデートを楽しむことをお勧めする。

© 林特
古着男と109ギャルの親密な触れ合い
90年代の西門町には、主に2つの流行の柱があり、一つは安室奈美恵が起こしたギャルブームだ。当時、路面ではいたるところでルーズソックスと厚底ブーツが販売されていた。ルーズソックスはもちろん緩ければ緩いほど、靴底は厚ければ厚いほど良しとされ、女子高生は皆9頭身のプロポーションを目指していた。もう一つの流行は、お香の香りが漂う古着屋「達新美」や「丁丁園」だ。ようやく貯めたお小遣いを握りしめて、アディダスのヴィンテージスニーカーや、オレンジラベルのついたリーバイスのパンツを買いに行ったりした。
かつて西門町の象徴だった「達新美」は、今は姿を消した。しかし、「丁丁園」はまだ万年ビルに残っている。店は小さくなってしまったが、もしまたオレンジマークのジーンズを探したいなら、いつか訪ねて、老舗古着屋特有の8番のお香の香りも感じてほしい。

© 林特