2022-06-02 世界

アフリカ諸国に深刻な飢餓の危機が迫る ロシアのウクライナ小麦輸出阻止が原因

© Photo Credit: Reuters /達志影像 Macky Sall

注目ポイント

アフリカ大陸の加盟55か国で構成されるアフリカ連合の議長国セネガルのマッキー・サル大統領は今週、ロシアによるウクライナ産穀物の輸出阻止が食糧不足や物価上昇など、「破滅的なシナリオ」をもたらすとして、欧州連合(EU)の会議で早期解決を訴えた。

アフリカ連合を代表してサル大統領は5月31日、ブリュッセルで開かれたEU首脳会議にリモートで参加し、このまま世界的な食糧不足が続けば、「最悪の事態が訪れることになる」と警告。アフリカ諸国はロシア産とウクライナ産小麦に依存していることから、世界規模の食糧不足になれば最も大きな被害を受けると述べた。

サル氏は、アフリカ大陸では2億8200万人がすでに飢えに苦しんでいるとし、「一刻も早い問題解決が必要だ」と述べた。その上で、「穀物を放出して輸送経路を確保し、市場に送り出してほしい。それで破滅的シナリオを回避することができるからだ」と対応を求めた。

英紙ガーディアンによると、侵攻前、アフリカ諸国は小麦の44%をウクライナとロシアから輸入していた。ウクライナだけでも年間4億人分の小麦を生産していたとされる。

さらにこの問題は、地球規模の食糧難につながる可能性すらある。

原油や肥料の価格高騰に加え、パンデミックによる労働制限がいまだ多くの地域で尾を引く中、ロシアによるウクライナの港の封鎖は、世界の食糧供給に破滅的な打撃をもたらす〝パーフェクト・ストーム〟だと専門家は指摘。フランスや米国、インドなどの国で懸念される干ばつもまた、小麦などの収穫減になるおそれがあるとガーディアン紙は報じている。

これについてフランスのマクロン大統領は、ドイツのショルツ首相と共にロシアのプーチン大統領に対して、国連決議に基づき港の封鎖を解くよう説得に努め、トルコのチャブシュオール外相は、ロシアのラブロフ外相と来週、ウクライナ産穀物の輸出のため黒海に〝海の回廊〟を設けることを含め、会談することを表明した。

一方、国連世界食糧計画(WFP)のピーズリー事務局長は5月上旬、43か国で約4900万人が飢餓に瀕していると警告。「多くの国で、われわれは腹をすかせた子供たちから食料を取り上げ、飢えた子供たちに分け与えるという胸が痛くなるような決断に迫られている」と危機感を示した。

アフリカ連合のサル議長は、肥料の価格は昨年から3倍になり、今年の穀物の収穫は20~50%減る見込みだと説明。ロシアの金融機関への制裁が事態を悪化させているとしてEUを非難。金融決済システム、国際銀行間通信協会(SWIFT)からのロシア排除は、「商品があっても支払いが複雑化し、購入不可能にもなる」と憤り、国連の協力によるウクライナからの穀物搬出を支持すると述べた。

そんな中、バルト海沿岸のエストニアとリトアニアは、海洋の〝有志連合〟による黒海の封鎖解除を提案。それによると、ウクライナ産穀物を輸送する貨物船をロシアが妨害する恐れがあるため、欧州諸国の〝有志〟が貨物船を保護するため黒海に軍艦を派遣するというものだ。

さらに、リトアニアのランズベルギス外相はガーディアン紙のインタビューで、海軍の有志連合と同時に、国連はロシアから航行の安全確保を取り付け、ウクライナ南西部の港オデーセの湾内に敷設された機雷をウクライナが撤去することで、穀物を同港から安全に輸出できるとしている。

5月31日のEU首脳会議後、欧州理事会のミシェル議長はツイッターに、「ロシアは食糧を戦争の武器にしている。穀物を破壊し、出荷を阻止し、世界を飢餓の危機にさらしている。EUは急いでウクライナの陸路での輸出を確保し、代替できる海洋ルートを探らなければならない」と投稿した。

そのミシェル氏は会議後の記者会見で、黒海からの海洋ルートが最も重要だが、「うまくいくかどうかは分からない」と漏らしていた。

欧州会議は6月末までに2000万トンの小麦をウクライナから出荷させたいとしているが、その量は収穫されて倉庫に放置されたものの半分だという。トラックや列車を使っても輸送量は限られているが、だからといって別の海洋ルートを見つけ出すのは至難の業だ。さらに、ウクライナから出荷された穀物がEU国境を超えるには、平均16日間足止めされるという。

ウクライナの生産者農家の男性は倉庫に積まれた小麦を示しながら、「このまま腐ってしまう前に、どんな値段でもいいから必要なところに届けてほしい」と涙ながらに訴えた。

 

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