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アフリカ大陸の加盟55か国で構成されるアフリカ連合の議長国セネガルのマッキー・サル大統領は今週、ロシアによるウクライナ産穀物の輸出阻止が食糧不足や物価上昇など、「破滅的なシナリオ」をもたらすとして、欧州連合(EU)の会議で早期解決を訴えた。
アフリカ連合を代表してサル大統領は5月31日、ブリュッセルで開かれたEU首脳会議にリモートで参加し、このまま世界的な食糧不足が続けば、「最悪の事態が訪れることになる」と警告。アフリカ諸国はロシア産とウクライナ産小麦に依存していることから、世界規模の食糧不足になれば最も大きな被害を受けると述べた。
サル氏は、アフリカ大陸では2億8200万人がすでに飢えに苦しんでいるとし、「一刻も早い問題解決が必要だ」と述べた。その上で、「穀物を放出して輸送経路を確保し、市場に送り出してほしい。それで破滅的シナリオを回避することができるからだ」と対応を求めた。
英紙ガーディアンによると、侵攻前、アフリカ諸国は小麦の44%をウクライナとロシアから輸入していた。ウクライナだけでも年間4億人分の小麦を生産していたとされる。
さらにこの問題は、地球規模の食糧難につながる可能性すらある。
原油や肥料の価格高騰に加え、パンデミックによる労働制限がいまだ多くの地域で尾を引く中、ロシアによるウクライナの港の封鎖は、世界の食糧供給に破滅的な打撃をもたらす〝パーフェクト・ストーム〟だと専門家は指摘。フランスや米国、インドなどの国で懸念される干ばつもまた、小麦などの収穫減になるおそれがあるとガーディアン紙は報じている。
これについてフランスのマクロン大統領は、ドイツのショルツ首相と共にロシアのプーチン大統領に対して、国連決議に基づき港の封鎖を解くよう説得に努め、トルコのチャブシュオール外相は、ロシアのラブロフ外相と来週、ウクライナ産穀物の輸出のため黒海に〝海の回廊〟を設けることを含め、会談することを表明した。
一方、国連世界食糧計画(WFP)のピーズリー事務局長は5月上旬、43か国で約4900万人が飢餓に瀕していると警告。「多くの国で、われわれは腹をすかせた子供たちから食料を取り上げ、飢えた子供たちに分け与えるという胸が痛くなるような決断に迫られている」と危機感を示した。
アフリカ連合のサル議長は、肥料の価格は昨年から3倍になり、今年の穀物の収穫は20~50%減る見込みだと説明。ロシアの金融機関への制裁が事態を悪化させているとしてEUを非難。金融決済システム、国際銀行間通信協会(SWIFT)からのロシア排除は、「商品があっても支払いが複雑化し、購入不可能にもなる」と憤り、国連の協力によるウクライナからの穀物搬出を支持すると述べた。