2022-06-02

ベトナムのフォー店の名前にはなぜ数字が入っている?そこには覚えやすさと戦争や移民の記憶が見え隠れする

© 吳象元

注目ポイント

移住した年を表す以外にも、数ある川沿いのフォー店の中には、1955年にベトナムが南北に分断される前の最後の年を表す「Pho54」、そして1945年の日本統治時代の北ベトナムの飢饉を表す「Pho 45」、1975年のサイゴン陥落を表す「Pho 75」、さらに戦時中のベトナムから逃れた1967年を表す「Pho 67」があるという。

 

ベトナムと中国の血を引くアメリカのスタンドアップコメディアン、アリ・ウォン氏は、公演中にアジア系の夫ジャスティン・ハクタ氏とのエピソードをしばしば披露しているが、中でも絶賛された作品「ベイビー・コブラ」においては、次のように語っている。

 

「私に出会うまで、彼(ジャスティン・ハクタ)はベトナム人のことを何も知らなかった」
彼が最初のデート場所に選んだのは、ロサンゼルスの西側にある「Pho Show」というレストランだった。彼は「ここは本格的なベトナム料理店だ!Yelpで調べてきたよ!」と言ったが、私は「本物じゃないよ! まず、名前で分かるでしょ? 店名に数字が入ってないんだから」と返した。

アメリカにあるベトナムのフォー店の名には「Pho 79」、「Pho 75」、「Pho 89」など、暗号のように数字が入っていることが多い。そこにはどんな意味があるのだろうか?

バージニア州ニューポート・ニューズにある川沿いのフォー店「Pho 83」の公式サイトによると、ベトナムでフォーが家庭の食卓から外の市場へ出始めた頃、少しでもお客様に覚えてもらいやすくするために、部屋番号や住所にちなんだ数字を店名に付けたのが始まりだそうだ。その後、ベトナム戦争後にアメリカに渡ったベトナムの移民(※注釈)が、異国の地でフォー店を開く際、多くのベトナム人が「数字入りのフォー店名」の伝統を引き継いでいった。

© 吳象元

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しかし、ベトナム戦争や移民を経て、その数字には単なる目印ではなく戦争や異国への移住の記憶も見え隠れするようになった。

サイゴン大学を卒業したモニカは、1975年のベトナム戦争終結後、1977年にベトナムを離れ、カリフォルニアに移住した。家族を養うために、1986年にカリフォルニア州ウェストミンスターに「Pho 86」をオープンした。その向かい側にまた別の有名ベトナム料理店「Pho 79」が出来たが、創業者のジョン・グエン氏は、「79」は自分がアメリカに来た年を表していると語った。

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移住した年を表す以外にも、数ある川沿いのフォー店の中には、1955年にベトナムが南北に分断される前の最後の年を表す「Pho 54」や、1945年の日本統治時代の北ベトナムの飢饉を表現した「Pho 45」、1975年のサイゴン陥落を表現した「Pho 75」、また、戦時中のベトナムから逃れた1967年を示す「Pho 67」や、創業者の両親が1983年にアメリカに移住したことから、「Pho 83」と名付けられた店がビクトリア州ニューポート・ニューズにある。

Posted by Pho 75 on Friday, June 17, 2016



また、カリフォルニアのベトナム料理店の中には、お客様の覚えやすさのために「Pho 555」と名付けられた店もあり、また中国圏でもベトナムでも「8」という数字は縁起の良い数字ということから「Pho 888」という店名の店もある。

Q&Aサイト「Quora」に寄せられた「ベトナムのフォー店にはなぜ店名に数字が入っているのか」という質問に対し、Thái Lê Huyさんは他の店名の意味も挙げてこう答えた。
 


「Pho 24」:当初フォー一杯の値段は24,000ベトナムドン(日本円で約132円)だったことから。
「Pho 32」:自宅住所 が32番地だったことから。
「Pho 24/7」:24時間営業だから。

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