2022-06-03 経済

月イチ連載「山本一郎の#台湾の件」第3回:バイデン大統領が日本にやってきて、台湾についておおいに語って帰って行った件

注目ポイント

5月20日から24日にかけて、大統領就任後初めて韓国と日本を訪問したジョー・バイデン米大統領。日米共同記者会見では、台湾有事の際に米国が軍事的に関与する意思があると明言し、国内外で大きな反響を呼びました。バイデン大統領の“大騒ぎ”から浮き彫りになった、米国の対中政策や台湾問題の変化を山本一郎さんが読み解きます。

ジョー・バイデンさんの大騒ぎは何だったのか

日米関係において、ここまで明確に台湾の意義と価値について語った大統領がいただろうかと思うぐらい、アメリカ大統領であるジョー・バイデンさんが大騒ぎして帰って行きました。

© Photo Credit: Reuters / 達志影像

 

何だったんだろう、あれは。

先日、本稿で中国本土の明から清へと王朝が移り変わる過程で、混乱期の東アジア全域をまたにかけて活躍した鄭成功の話を書きました。文字通り、東アジアの要衝である台湾の重要性を知り尽くし、貿易の拠点として、現代台湾の繁栄を導いた立役者としての鄭氏台湾はロマンが詰まっているなあと思うわけなんですが。

その台湾については、いままで中国との関係の中で翻弄され、また、先に中国共産党による介入を受け、政変が起きて事実上自治的な民主主義政体が崩されてしまった香港の「次は台湾かもしれない」という危機感もまた覚えずにはいられないのが最近の東アジア情勢です。

ロシアによるウクライナ侵攻で、現代国際社会における「武力による現状変更を許さない」という決め事が根底から揺らぐと、当然のように香港や朝鮮半島、ミャンマー、南シナ海といった中国外縁部地域や国家に対して国力を伸長させた中国政府が勢力下に収めようとかなりの浸透を図ってくることは自明でもあります。

先日も、スリランカが中国からの借款の返済で大変なことになり、事実上のデフォルト(スリランカ国債などの債務不履行)に追い込まれかねない状況となりました。中国の経済進出を後押しする「一帯一路」政策によって、政府が税収として回収できない大規模なインフラ投資をするための資金を中国から借り入れることで起きるこの「債務の罠」にハマることもまた、ある種の経済侵攻だと批判をする向きもあります。


スリランカ、中国に返済再考を嘆願 債務のわな、コロナ追い打ち:時事ドットコム

 https://www.jiji.com/jc/article?k=2022011200674


同様のことは、フィリピンの高速鉄道建設で国際入札に勝った中国が差し入れた計画の数割増しの建設費がかかる問題であるとか、アフリカ開発で中国企業の進出を受けて本来開発をするはずだった公共インフラのみならず通信事業や資源開発事業などもごっそり権益を持っていかれて身動きが取れなくなるなどの状況になっているのもニュースで多く流れます。

 

台湾有事におけるアメリカ軍の方針が明らかになった

しかしながら、これらの中国からの経済進出で浸食された国々と違って、台湾の場合はその分野では無風で済んでいるのはひとえに「台湾の経済が強いから」と言えます。コンパクトな国土に高い技術に基づいた付加価値の高い産業を擁する台湾は、必ずしも国土開発において中国からの資金や技術導入を必要としない強靭な経済を持っています。だからこそ、本来ならば真っ先に中華製インフラ導入で債務の罠にハマっておかしくない台湾は、いえ独自でやれますからということで中国政府からの影響力を制御することが可能になっているのです。

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