2022-03-02 経済

ウクライナ侵攻賞賛する中国の若いネット世代「ロシア支持、戦争支持、プーチン支持」の背景

© Photo Credit: Reuters / 達志影像

ウクライナに侵攻したロシアのプーチン大統領を世界が激しく非難する中、驚くことに中国のインターネットはプーチン氏を賞賛するメッセージであふれている。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、中国のソーシャルメディアユーザーらは「プーチン大公」、「旧ソビエト連邦最高の遺産」、「今世紀最高の戦略家」などとプーチン氏を絶賛し、反戦デモに参加したロシア人については〝米国に洗脳された者たち〟として批判している。

ウクライナ侵攻が始まった2月24日、プーチン氏が行った演説に反応し、多くの中国人がウクライナ侵攻を支持するメッセージをSNSに投稿。同国のミニブログ「微博(ウェイボー)には、「もし自分がロシア人なら、プーチンは私の信仰、私の光だ」や「感動で涙した」とするメッセージもあった。同紙は、「中国のネットはほとんどがロシア支持、戦争支持、プーチン支持」だとしている。

プーチン氏の「ロシアは西側による政治的、思想的、軍事侵略の犠牲者だ」とする主張には、多くの中国人が深く共感。同紙は、米国とその同盟国は中国の台頭や、それにより世界で新しい秩序が構築されることを恐れているとする中国の言い分とも一致しているからだとしている。

一方、中国政府はこれまでロシアの侵略について慎重な発言をしている。「侵攻」「侵略」などの表現を避け、ロシアを非難する声明も出していない。ただし、支持する立場も表明していない。

ニューヨーク・タイムズは、習近平体制の中国は近年、「戦狼(せんろう)外交」と呼ばれる好戦的で攻撃的な外交スタンスを取るようになり、外交官や国営メディアの記者、政府要人にいたるまで、タカ派傾向にあると指摘。その影響で、「世界は中国と西側、特に米国、との間のゼロサムゲーム」と考える若い世代の〝ネット住民〟を形成したと同紙は分析する。

戦狼外交とは中国の人気戦争アクション映画「戦狼 ウルフ・オブ・ウォー」(2017年)から取った造語で、敵対的とみなした相手を威嚇する外交スタイルは、特にコロナ禍が始まった後に顕著になったと多くの専門家はみている。

そんな中国で、問題のプーチン演説は、国粋主義よりのニュースサイトに中国語訳された全文が掲載され、たちまちSNSで拡散された。「#プーチン10000語演説全文」とのハッシュタグが付けられたウェイボーのメッセージは、24時間で11億回も閲覧されたと同紙は伝えている。

ウェイボーには、「軍事動員の理由がよくわかる演説だ」、「どうしてこのスピーチを聞いて涙が出るんだろう。なぜなら、これが彼ら(西側)が今まで中国を扱ったきたやり方と同じだからだ」などのメッセージも投稿された。

このような国家主義的なネットユーザーは、1990年代以降に生まれた世代で「未熟な共産主義者」や「完全に赤く染まっていない」という意味で「小粉紅(しょうふんこう=小さなピンク)」と呼ばれ、戦狼外交を展開する政府要人の姿勢に大きな影響を受けているとされる。

その典型的な例として、同紙は中国外務省の華春瑩(かしゅんえい)報道官を挙げた。ロシアがウクライナに侵攻する前日、華報道官は定例会見でウクライナ危機の〝真犯人〟は米国だと名指しした。米国が北大西洋条約機構(NATO)をロシアの玄関先まで東方に拡大し、ロシアとの合意を破って最新の攻撃的戦略兵器を配備したと主張。「その結果、大国を追い詰めることになると考えなかったのか?」と米国を糾弾した。

また、ロシアの侵攻が始まり、報道陣から「ロシアの『特別軍事作戦』は侵略と受け取るのか」と質問されると、華報道官は話をすり変え、終始、米国批判を展開。コソボ紛争末期の1999年に起きた米軍機による在ユーゴスラビア中国大使館誤爆事件に言及した。

このNATO作戦中の悲劇で中国人記者ら3人が死亡したが、当時の中国政府は「強い抗議」を行ったものの、有効な対抗措置を取ることもなく、「誤爆」という米国側の言い分をそのまま受け入れた。その屈辱から華報道官は「NATOはいまだ中国人の血の代償を負っている」と発言。中国国営・人民日報はこの発言をハッシュタグ付きでウェイボーで発信すると、たちまち10億回閲覧された。

戦狼外交を支持する「小粉紅」たちが、ウクライナ侵攻を西側の象徴である米国に対する〝宣戦布告〟と変換し、反米感情の高まりと共に、自分たちの代弁者としてプーチン氏支持につながっているように映る。だが、そこに戦禍のウクライナの人々への思いは存在しない。

 

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