2022-05-30 アジア

ウクライナ侵攻支持するプーチン氏の後ろ盾 ロシア正教会最高指導者キリル総主教の正体

© Photo Credit: AP / 達志影像

注目ポイント

プーチン大統領のウクライナ侵攻を支持するロシア正教会のモスクワ総主教キリル1世(75)。そんな人物を最高指導者とする同正教会との関係を保持してきたウクライナ正教会が、ついに関係を完全断絶したことが明らかになった。宗教者でありながら、〝独裁者〟プーチン氏の後ろ盾とされるキリル総主教とは一体何者なのか。

プーチン大統領のウクライナ侵攻を支持するロシア正教会のモスクワ総主教キリル1世(75)。そんな人物を最高指導者とする同正教会との関係を保持してきたウクライナ正教会が、ついに関係を完全断絶したことが明らかになった。宗教者でありながら、〝独裁者〟プーチン氏の後ろ盾とされるキリル総主教とは一体何者なのか。

キリスト教東方正教会のロシア正教系ウクライナ正教会が、ウクライナ侵攻を非難し、ロシア正教会との関係断絶を宣言したとロイター通信など、複数のメディアが伝えた。

ロシアが2014年、クリミアを併合し、東部ドンバス地方の親ロシア派分離主義者を支援したのをきっかけに、ウクライナでは約3分の1にあたる約7000の教区を擁する「ウクライナ正教会」が、ロシア正教会からの独立を表明。世界中にある東方正教会の精神的支柱とされるコンスタンティノープル(トルコ・イスタンブール)総主教ヴァルソロメオス1世は19年、ロシアの反対を押し切ってこれを承認した。

ウクライナ東部の多くの正教会教区は、その後もロシア正教会と融和的な関係を保ってきたが、ここにきてロシア正教の最高位であるキリル総主教が、プーチン大統領のウクライナ侵攻を擁護し、国民の戦意をたきつけるような姿勢に憤り、「キリル総主教の立場には、もはや同意できない」とし、ロシア正教会との決別に踏み切った。

そんなキリル総主教とはどんな人物なのか。AFP通信は、総主教がプーチン氏の政治機構における重要な柱だと指摘。保守的な宗教的価値観を推進し、反対派の抗議運動を糾弾することで、クレムリンの権威主義的傾向を強めてきたという。また、プーチン氏の統治を〝奇跡〟とたたえるほど「熱烈な信奉者」とも伝えられる。

AFP通信によると、「総主教のプーチン氏への支持は、09年にモスクワ総主教に就任して以来、揺るぎない」とされ、「12年には、プーチン氏の統治こそソビエト連邦崩壊後の経済的混乱に終止符を打った〝神の奇跡〟」だと称賛。「あなたは、わが国の歴史のねじれを修正するため自ら大きな役割を果たした」と高く評価した。

プーチン氏自身やオリガルヒ(新興財閥)、シロビキと呼ばれるインナーサークルの取り巻きたち同様、総主教もまたサンクトペテルブルクの出身だ。1970年に神学校を卒業後、教会の中でスピード出世し、外交部門に所属していた。

米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は先週、キリル総主教はソ連国家保安委員会(KGB)の元工作員だと多くの教会史家の間で信じられているとし、「90年代に公開された旧ソ連時代の資料からは、キリル総主教が〝ミハイロフ〟のコードネームを持つKGB工作員だったことがうかがえる」と報じた。

同紙はまた、「直接名前は出てこないが、スイスに本部がある世界教会協議会(WCC)でロシア正教会の代表を務め、国際的な教会会議にたびたび出張し、KGBの担当者に情報を提供していた〝ミハイロフ〟なる人物に言及した複数の文書がある。これは71年に当時24歳でロシア正教会代表としてWCCに出席したキリル総主教の経歴と一致する」と分析した。

KGBと教会指導者のつながりを調査している英国の作家フェリックス・コーリー氏はWSJ紙に、「キリルがKGBのエージェントだったことは疑いようがない」と断言。旧ソ連時代末期には、正教会をはじめとする宗教の指導者がKGBと協力することはよくあったと説明した。

2月24日にロシアが軍事行動を開始して以来、キリル総主教は好戦的な説教を展開。ロシアとウクライナの歴史的な一体性を損なおうとする「敵」を制圧するため、国民に団結を呼び掛けている。そんな総主教を多くのロシア専門家は、「本業は政治家」で「宗教家の顔を持つ億万長者」と位置付けている。

 

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