2022-06-01 経済

アパグループ元谷外志雄会長インタビュー【日台エグゼクティブの眼-Vol.1】

© アパグループ元谷外志雄会長

注目ポイント

アパグループは1971年の創業以来、一度も赤字を出すことなく日本最大のホテルチェーンにまで発展してきた。コロナ禍でも増益、国内観光の新たな需要の掘り起こしを進めるグループの躍進には「厳しいときこそ拡大戦略」「約束は前向きにやぶれ」という創業者、元谷外志雄会長の経営哲学がある。

「厳しいときこそ拡大戦略」背景に圧倒的な収益力の高さ

創業から51年間、一度も赤字を出したことがないアパグループは、このコロナ禍でも黒字を計上した。前2021年11月期決算においては、昨年の営業利益+300%の増益。創業50年を迎え、新型コロナ感染症の収束も見えてきた2022年4月には、長男の元谷一志氏が社長に就任した。新体制で始動したこのタイミングで、外志雄会長の目に映る今の、これからの日本、ホテル経営について話を聞いた。

 

ーーコロナ禍で厳しい状況にあるホテル業界で、アパグループは営業利益が前年比+300%の増益を達成されています。どのような対策をされたのでしょうか。

人もカネも東京を中心に集中投資。直営ホテルのほとんどが土地を買い自社開発しており、ホテルの建物を借りて運営する事業者やブランド名を借りてロイヤリティを払う事業者と比べ、高い収益力で経営できている。しかも、東京中心の直営ホテルは出張族に使い勝手がいい場所として需要を見極め、駅近でのドミナント出店をしてきた。累計2000万人超のアパホテル会員の安定した利用に支えられ、コロナ禍においても一定の稼働率を確保することができた。

東京一極集中の戦略は今後も続けるつもりだ。リスクが大きいと判断しているローカルの出店は直営ではなく、ロイヤリティ収入を得られるFCでの出店を今後も増やしていく。現時点で人口や観光客の絶対数がさほど大きいエリアではなくとも、私は伸び率を重視している。コロナ収束後、福岡市は台湾や韓国を中心としたインバウンド需要が回復し、観光客が増えるだろう。人が増え、新しい需要が出てくるところに今後も出店していく。

 

ーー台湾や韓国、アジア地域への出店についてはどうお考えでしょうか?

海外は、FCでのニューヨーク近郊での展開に加え、直近ではカナダのホテルチェーン買収などを行い、来るべき日本の人口減に対応した成長戦略を考えている。ただ、台湾はじめアジアへの出店は状況に十分配慮しないとリスクがある。土地を確保し、建設を進めている途中で国の政策転換などがあった場合、竣工が遅れたり難しくなったりする可能性もある。

そういったことを踏まえ、直営ホテルはまだ積極的に海外展開するつもりはない。海外に打って出るのは、日本国内で断トツの地位を築いた後だ。まだまだ国内に需要がある。直営ホテルだけみれば約30%の利益率を誇る今は、最大限の努力を国内に注いでいきたい。現在の国内シェア8%から20%まで高め、利益率が下がってきたときが海外展開を強化するタイミングだと考えている。

同業他社はホテル建設を延期したり、投資規模を縮小したりしているが、私はコロナ前の計画通りやると決めている。厳しいときにこそ、拡大戦略。これも、収益力が高いからいえることだ。

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