注目ポイント
地方創生の流れが強まる台湾。台東の人気観光地でセレクトショップ「東東市」を運営する黄秀玲(Show)は、地域の手仕事や特産品を集め、観光客には新たなライフスタイルの提案を、地域にはポジティブな経済サイクルを生み出している。
台東ライフスタイルのショーウィンドウ
台湾・台東県の鉄花新聚落転運站(ターミナル駅)にある「東東市」は、台東に初めて登場したライフスタイル重視のセレクトショップだ。ゆったりとデザインされたスペースに、眼を引く真っ白なカートが並んでいる。
店内では地元の女性たち、Uターンした若者、移住者といった台東の素晴らしい生産者による、手作りの工芸品やエッセンシャルオイル、お茶、ドライフルーツ、フレグランス、フルーツアイスなど50種類以上のアイテムを取り扱っている。ポップアップイベントや展示で旅行者や地元の住民を魅了し、地元の人も眺めているうちに時間を忘れてしまうほどだ。

台東初のライフスタイル重視のセレクトショップ「東東市」は、地域の価値を伝え、土地の魅力をアピールしている。 東東市/提供
近年、台湾でも地方創生の流れが強まっているが、東東市の創設者、黄秀玲(Show)氏がセレクトショップをスタートさせたのは、台東で産業に関するアドバイスをするなかで、多くの優れた起業グループと知り合ったことがきっかけだった。
起業家たちに話を聞くと、誰もがラストマイル、つまり「チャンネル」に関するリソースの悩みを抱えていた。しかし、台東で最も立地に優れた「鉄花新聚落」へ行ってみると、観光客はたくさんいても未活用のスペースが目立っているのに気付いたという。
観光客はサービスセンターに立ち寄った後は、何もすることなくブラブラしているだけという状況。そこで黄氏は、県から駅の一角を借り受け、「未来市」と提携して東東市を創設し、「台東ライフスタイルのショーウィンドウ」と位置付けた。台東の優れた職人や工房、特産品を集め、多様で現代的な台東文化を旅行者に伝え、地域の発展につながる経済的エネルギーを活性化させるために。
モノの後ろにある人の物語を伝える
東東市は台東旅客サービスセンターと隣り合っており、旅の情報を提供するほか、地元の職人の手によるアイテムを通じて台東のライフスタイルを提案している。台東文化研究者からは台東で初の「アンテナショップ」と呼ばれ、地方創生のための新たな交流拠点となっている。
日本でアンテナショップといえば、地方自治体や企業が地域の観光や物産のPRを目的に運営し、アンテナショップからのフィードバックは、マーケットが求めるニーズを理解し、アイテムやサービスの最適化を図るツールとなっている。
時間に限りのある観光客があちこち歩き回らなくても、厳選されたその土地の特産品を見たり買ったりすることができるのは東東市も同様で、ここに来れば台東の優れたものはひと通りそろえることができる。東東市が「台東の宝石箱」と呼ばれるのも納得だ。
