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今年3~4月にインドやパキスタンを襲った「100年に一度」とされる連日45度を超える熱波は、人類が引き起こした気候変動によるものとみられ、南アジア地域の将来を垣間見る現象だと国際的な専門家グループが今週、研究報告書を発表した。
「ワールド・ウェザー・アトリビューション」の報告書によると、地理的に広大なエリアを、1年のこれほど早い時期に、長期間にわたり熱波が襲った例は歴史上極めて珍しく、100年に1度の現象だという。だが、人為的な気候変動により、このままのペースで地球温暖化が続けば、このような熱波が発生する率は30倍高まるだろうとしている。
インド西部のムンバイにあるインド工科大学の気象研究者で、専門家グループに参加したアルピタ・モンダル氏によると、もし産業革命以前のレベルから地球規模で気温が2度上昇すると、このような熱波は少なく見積もって100年に2度、最大で5年に1度の割合で発生することになるという。
今回の熱波は、「今後起きることの前兆」だとモンダル氏は指摘する。それでも、同報告書は保守的な見通しだ。英気象庁が先週発表した分析では、南アジアで起きたような熱波は、気候変動により発生率はこれまでの100倍となり、今回のような長期間続いた熱波は3年に1度のペースで発生するとしている。
「ワールド・ウェザー・アトリビューション」は、熱波の期間の長さや被災地域の規模など、地球温暖化によるとみられる要因をもとに分析していることから、ほかの研究結果と異なるという。「現実はおそらくわれわれのものと英気象庁の分析の中間くらいではないか」と専門家グループの1人で、インペリアル・カレッジ・ロンドンの気象学者フレデリーケ・オットー氏は推測する。
AP通信によると、パキスタンではここ数週間、平均気温45度以上の日が続き、同国中部のジャコババードやダードゥでは最高気温50度を超える日も記録された。インドの首都ニューデリーでも同様の期間、49度に達している。
インドでは1901年に気象観測が始まって以来、今年3月の気温が過去最高を更新し、パキスタンやインドの一部では4月が過去最高となった。この熱波により、当局は少なくとも90人が死亡したと発表したが、実際の数ははるかに多いとの見方もある。専門家によると、世界でこのような熱波が襲う地域のうち、約3分の1以上がインドだという。
そのため専門家は、気候変動対策として温室効果ガスの排出を削減するだけではなく、このような状況に対応した環境作りを早急に進める必要性を強調。熱波によるリスクが高いのは子供と高齢者で、その中でもエアコンや水へのアクセスのない貧困層が最も危険だからだという。
この問題に積極的に取り組んでいるのがインド西部のアフマダーバードだ。同市は2013年、住民840万人のための熱波対策を構築した南アジア最初の都市となった。例えば、医療従事者や住民に対し、熱波に備えるよう知らせる早期警戒システムを導入。同システムはまた、住民が木陰で涼めるよう公園のゲートを開けるよう市職員に警告したり、授業を短縮するよう学校側に指示している。同市はまた、住宅の屋根について高温にならない素材を研究中だという。