2022-03-01 経済

プーチン大統領がウクライナ戦争で「核の脅し」発動 NATOの軍事支援と西側による経済制裁に対抗

© Photo Credit: AP / 達志影像

ウクライナを侵略したロシアのプーチン大統領は2月27日、北大西洋条約機構(NATO)の軍事介入をけん制し、西側諸国の対ロ経済制裁に対抗するため、「核の脅し」という禁断のカードを切ってきた。軍の「核抑止部隊」に「特別警戒態勢」に入るよう指示したのだ。ウクライナ短期制圧のシナリオが崩れ、西側から厳しい経済制裁を受け、天然ガス・石油の輸出も制限されて追い詰められたプーチン氏。同氏の切り札がなくなった今、世界は核兵器使用という重大な脅威にさらされている。

ロイター通信によると、英国のウォレス国防相は同28日、プーチン氏の命令について、核兵器の使用準備を進める実質的な措置には結びついていないとの見解を示した。ウォレス氏はプーチン氏の真意を分析しているとした上で、「こうした発言をメディアで拡散することで、ウクライナでプーチン氏が直面している困難から注意をそらせようとしていることを忘れてはいけない」と述べた。

また、プーチン氏の核抑止部隊に対する命令は、ほとんど言葉だけのもので、「実際に核兵器を使用することは望んでいない」との見方を示し、ロシアが核による抑止力を持つことを再認識させようとしたものだと指摘。「具体的には軍の準備態勢につながっていない」と述べた。

だが、英BBCのモスクワ特派員スティーブ・ローゼンバーグ氏は「プーチン氏は核のボタンを押すのか?」との見出しでオピニオン記事を同局のニュースサイトに掲載。プーチン氏は「そんなことをするわけがない」と思ったクリミア併合やウクライナ東部ドンバスへの介入、そして今回のウクライナへの全面戦争をことごとく実行してきたとした。その上で、「『するわけがない』というのは、プーチン氏には当てはまらない。そう結論するしかない」と記した。

一方、ホワイトハウスはこれ以上プーチン氏を刺激しないように努める方針だ。バイデン米大統領は第3次世界大戦を避けるため、これまでも「米国はウクライナの主権のためにロシアと戦争をするつもりはない」と繰り返している。

米紙ニューヨーク・タイムズは、プーチン氏が核抑止部隊への「特別警戒態勢」を出したことで、米国もその態勢に見合う「デフコン3」のレベルを引き上げることもできると指摘。「デフコン」とは米国防総省が戦争への準備態勢(ディフェンス・レディネス・コンディション=デフコン)を5段階に分けたもので、「デフコン5」は平常時、「デフコン1」は完全な戦争状態で、核攻撃機が24時間アラスカまたは北極圏で上空待機となる。「デフコン3」は通常より高度な防衛準備状態を示す。

もしくは、「デフコン」レベルを上げることなく、「プーチン氏がアルマゲドン(世界最終戦争)の脅威を再び煽っているだけ」だとして無視することもできると同紙は選択肢を挙げた。

ところがバイデン政権は、少なくとも戦争のエスカレートを避けるための方法を選び、それは米国のリンダ・トーマス・グリーンフィールド国連大使が27日の安全保障理事会でした演説にも表れている。同大使は「ロシアにとって脅威はない」と説得に努め、「全ての国に脅威を与えることになる事態にエスカレートさせる不必要な動き」を止めるようプーチン氏をとがめた。

だが現実は想定以上に厳しい。この戦争が超大国同士の直接衝突に発展する可能性を秘め、もしそうなればプーチン氏は限界まで「核の脅し」を突き付けてくるとの懸念がバイデン政権内でも広がっていると同紙は伝えている。

さらに、国際社会にとって厄介なのが、プーチン氏の精神状態だとジェームズ・クラッパー元米国家情報長官は指摘する。特に、プーチン氏がウクライナをジェノサイド(大量虐殺)や核兵器を独自開発しているなどと荒唐無稽とも思われる理由で非難し始めた頃から、そういう声が聞かれるようになったとしている。「個人的には彼は狂ったと思う。判断能力を心配している」と米CNNに語った。

クラッパー氏だけではなく、米上院諜報特別委員会のマルコ・ルビオ上院議員も「本当はもっと話したいことがあるが、今言えることは、誰もが分かる通りプーチン氏は何かがおかしいということだ」とツイートした。ほかにも多くの米政府要人らが、同様の危惧を表明している。

 

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