「焼かない陶芸」として、世界42カ国に広がっているDECOクレイクラフトアカデミー・装飾粘土工芸(東京都・江東区木場)は、今年誕生から40年を迎える。日本発祥のこの工芸は、西洋陶器の美しさに魅せられた一人の主婦・主宰・宮井和子のこだわりから誕生した。

当時、紙粘土や小麦粉を使うパン粘土があったが、こうした粘土はこねるとベトベトと手や机にくっつき、薄く伸ばした時は形が崩れやすく、乾燥後ひび割れが起こりやすい欠点があった。そこで、石粉に接着材を混ぜて扱いやすくした石粉粘土を採用。べとつかず、弾力性、接着性に富んでいて、乾燥後のひび割れが起こりにくいため、従来手間のかかった花やインテリア小物などが簡単に作れるようになった。
誰にでも手軽に始められ、自分だけのオリジナル作品ができ、高級陶器の感じが出るこの未開だった工芸は、主婦たちの口コミで少しずつ広がり、誕生から3年目の1984年、銀座で開催した作品展を皮切りに、東京・大阪を中心に急速に拡大。現在では日本全国に700箇所以上の認定教室を持つまでに成長した。
その勢いは「世界でも類がない焼かない陶芸」というキャッチフレーズで世界へと発展。30年前の台湾進出を皮切りに、シンガポール、香港、上海、マレーシア、アメリカ、ロシアなど瞬く間に広がり、現在世界42カ国に認定教室を持ち、アジアでは1万人以上の会員が在籍し、今なおその数は増え続けている。
台湾に渡った当時、国内で普及していたのはパンフラワーや、硬く乾くと作品にヒビが入りやすく折れやすい粘土だった。そのため石粉粘土のくっつくという特徴は「作れないものが無い」ということで、高雄や台北を中心に広がり、イベント行うと1回の開催で200名上の参加者が集まった。中でも陶器にはない「編む」という手法を取り入れた籐細工風のかご作りは、台湾の女性たちを魅了しブームともなった。

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その後、粘土会社との共同開発で生まれたCLAY CRAFT by DECO(以下ソフトクレイ)が誕生。日本製のこの粘土は石粉粘土よりさらに、手を汚さず、軽くてしなやかに伸び、色粘土を混ぜることによって、あらゆる色をその場で作り出す。マシュマロのようなふわふわ感に、初めて触る方の多くがその心地よさに癒され驚き、作品づくりの幅を更に広げた。

近年は、宮井の娘である宮井友紀子が技術の伝承を受け継ぎ、新しい作風を産み出し新世代の粘土工芸へと牽引している。このコロナ禍では、いち早くオンライン授業を取り入れ世界へ配信し好評を得た。その中迎えた創立40周年だが、従来の会場を貸し切っての周年行事から「WEB展覧会」という新しい試みを取り入れ、世界中からの作品の出展を可能にした。もちろん台湾やアジア各国からも素晴らしい作品が出展されている。

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