注目ポイント
日本ではこの春、民法の改正で成人年齢が20歳から18歳に引き下げられた。大人と見なされる期間が増えた今回の見直しから、どのようなことが考えられるのか。中世ヨーロッパの子供観を引き合いに出しながら考察する。
2022年4月から成人年齢が、従来の20歳から18歳に引き下げられた。変更がなされたのはなんと140年ぶりである。これが見直されることで一体何が変わったのか。変更点をチェックしていこう。
18歳になったらできること
・携帯電話の契約
・ローンを組む
・クレジットカードを作る
・一人暮らしの部屋を借りる
・10年有効のパスポートを取得する
・国会資格を取る
・結婚が18歳からできる
などである。酒やタバコ、ギャンブルは現行のまま20歳になってからである。
これは何を意味するのだろう。当たり前のことだが、子供という守られた期間が減り、大人と見なされる期間が増えた。これは果たしていいことなのだろうか。
フィリップ・アリエス『〈子供〉の誕生』では、中世ヨーロッパでは、子供という概念はなかったと書かれている。子供の人権などなく、子供は動物と同じ扱いをされ、不意に殺されても不問に付されることが多かったという。ひどい例としては、子供をフリスビーがわりにして投げ飛ばし、死亡させた例もある。そして7、8歳になると徒弟修行に組み込まれて働き、大人と同等の扱いを受けた。恋愛も飲酒も自由だった。なぜ、7、8歳かというと、言語コミュニケーションが取れるようになる年齢だからである。
近代教育の発展で、徐々に子供という概念が出来上がっていった。特にセックスを禁忌とすることで、大人と子供を明確に分けた。そして、徐々に子供の人権も拡大してきた。
それが、ここにきて、子供の範囲を減らし、大人に組み込むという。これは果たして中世ヨーロッパへの緩慢な逆行なのであろうか。大人としての権利を取得すれば、当然その責任も背負わなければならない。子供は守られるべきもの、という考えから、後退した政策といえよう。
ごくごく簡単に言えば、これは、新自由主義的なものの象徴ではあるまいか。岸田政権は、新しい資本主義を唱えているが、これが、新しい資本主義かと問われれば、疑問である。
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