2022-03-04 経済

開幕式で幕が降りた、台湾人の北京五輪

© Photo Credit: AP / 達志影像

2022年の北京冬季五輪は2月20日に閉幕式が行われて、終わりを告げた。マスコット「冰墩墩(ビンドゥンドゥン)」の可愛い笑顔が見せたような平和の祭典であるはずだった。しかし、周知の通り、新型コロナウイルスの隔離や検査の問題、選手の競技服検査の問題、ドーピング問題などが度々公平性の論争の的となった。また競技のほかに、某有名テニス選手のセクハラ問題、香港の言論自由の弾圧、チベット自治区、新疆ウイグル自治区のジェノサイド問題、江蘇省徐州市の女性誘拐事件など、選手を応援の声以外に、様々な、問題に対する声も多く聞かれた。中国国内の様々な人権問題は不吉の雲のように「平和の祭典」の空を曇らせ、さらにロシアのウクライナ侵攻問題は世界中に不安を募らせていた。閉幕式のあと、片付けられずに多くの課題が残されたままだ。

一方、台湾の人の冬季五輪に対する感覚はほかの国と違っていた。殆どの台湾人にとって、開幕式にN H Kのアナウンサーが「台湾です!」と紹介した瞬間に競技に対して関心の大半は失われたのではないだろうか。台湾での注目度が最も高かった選手は、おそらく日本のフィギュアスケートの羽生結弦選手か、国籍問題と美貌が論議の中心となった中国の谷愛凌(アイリーン・グー)選手だろう(羽生選手は勿論テクニックがすごいが、筆者を含めほとんどの台湾人はアクセルとトゥループの違いを理解していないはず)。

それはそうだろう。南国の島・台湾は標高3000メートル以上の山以外に殆ど雪が降ることはなく、冬季五輪のウィンタースポーツの競技種目に出場できる選手を育てることはそもそも難しい。台湾を代表する「中華台北(Chinese Taipei、チャイニーズ・タイペイ)」五輪選手団(台湾のメディアでは「中華隊」とも略している)は、冬季五輪でメダルを獲得したことが全くなく、例年数人程度しかエントリーできない。今年もアルペンスキーに男女一人ずつ、リュージュに女性一人、スピードスケートに女性一人、合計四人しかエントリーできなかった。エントリーできた選手も、落選した選手も大変苦労していたが、その種目の認知度は低く、台湾国内では殆ど注目をされていなかった。日本と同じく、台湾では、国際試合で入賞できなければ、その種目の人気を盛り上がらず推進することは非常に難しい。メダリストを輩出した昨年の東京五輪とは違い、新型コロナウイルスの感染拡大の影響の中、台湾のマスメディアの冬季五輪についての報道は盛り上がりに欠けた。

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