2022-05-24 国内

バイデン氏、台湾有事に米の軍事防衛を約束 歴代政権の〝あいまい戦略〟から脱却鮮明に

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注目ポイント

来日中のバイデン米大統領は23日、東京での記者会見で、中国が台湾に軍事進攻した場合、米国が台湾を軍事的に防衛するかと問われ、「イエス」と即答し、「それがわれわれの決意だ」と明言した。これは、これまで歴代の米政権が示してきた台湾有事に関する〝あいまい戦略〟から明白に脱却したものだ。一方、中国は「14億の中国人民と対立する側に立ってはならない」と強く反発している。

昨年の大統領就任以来、初めての訪日となったバイデン氏は23日、日本の岸田首相と共同記者会見に臨み、米国の記者から、「ウクライナへは軍事介入を避けてきたが、もしそのような状況になった場合、台湾のための軍事防衛には積極的に関与するのか」と問われた。すると、バイデン氏は静かに「イエス」と返答。同記者が、「そのつもりなのか」と再び問われると、「それがわれわれの決意だ」と言い切った。

米紙ニューヨーク・タイムズによると、唐突とも受け取られるバイデン氏の〝サプライズ発言〟は、同席した米国側の高官たちをも驚かせた。米国はこれまで中国に対して武力行使をしないよう警告し、万一の場合、米国がどの程度軍事介入するかはあいまいにしてきたからだ。

バイデン氏の発言を受け、中国外務省の汪文斌(おう・ぶんひん)報道官は、「14億の中国人民と対立する側に立ってはならない」と反発。「米国側の言論に強烈な不満と断固たる反対を表す」とし、「中国は必ず主権と安全利益を維持し有言実行する」と警告した。

そんな中、ホワイトハウスはバイデン氏の発言内容を否定することに奔走。「大統領が言及したように、われわれの方針に変更はない」との声明を記者団に伝えた上で、「大統領は〝一つの中国〟政策と、台湾海峡の平和と安定に寄与することを再確認した。また、(米国の)台湾関係法に基づき、台湾の自己防衛を可能にするため、軍事支援をする決意を再確認した」と続けた。

だが、バイデン氏の発言が意味するところは、米国の台湾に対する軍事支援の再確認にとどまるどころではない。というのも、そもそも記者の質問が米国のウクライナへの姿勢と対比させるものだったからだ。バイデン氏は、台湾への関与がウクライナを超えるものだと繰り返し、「(中国が)武力で奪い取るという考えは不適切だ」とし、「そうなれば地域全体に混乱を起こし、ウクライナで起きたことの再現だ。その苦しみはさらに重いものとなる」と中国をけん制した。

ニューヨーク・タイムズ紙は、「バイデン氏は前任者(トランプ氏)による中国と台湾に関する計算された誤情報を無視してきた」と指摘。昨年8月、バイデン政権がアフガニスタン政府を見捨てた後、大統領は同盟国に対して、有事の際に米国は即時反応することをNATO(北大西洋条約機構)加盟国に改めて保証し、「それは日本に対しても、韓国に対しても、台湾に対しても同じだ」と語った。

台湾は、米国によるNATO加盟国や日本、韓国と同等の安全保障はこれまで明文化されてこなかっただけに、バイデン氏のこの発言は重要だと同紙は指摘する。

それから2か月後の昨年10月、バイデン氏はテレビ中継された討論会で、米国は台湾が攻撃された場合、防衛するのかとの質問に、「イエス。われわれには決意がある」と今回と同じ発言が飛び出した。その際もホワイトハウスは、「大統領の発言はこれまでの長期にわたる国の方針を変更するものではない」として、火消しにまわった。

バイデン氏の〝放言壁〟は、「実は確信犯」だとする見方もある。今年3月、ロシアのウクライナ侵攻をめぐり、プーチン露大統領を「戦争犯罪人」と断罪。それから1週間後、ウクライナからの避難民200万人以上を受け入れているポーランドを訪れた際には、プーチン氏について、「この男が権力の座にとどまってはならない」と厳しく非難。

またもやホワイトハウスは、「大統領の要点は、プーチン氏が隣国や地域に対して権力を行使してはならないということだ」とし、「ロシアでのプーチン氏の権力や体制転換に言及した訳ではない」と釈明に追われた。

それでも台湾有事に関するバイデン氏の発言は、これまでの米国の姿勢から明白に大きく踏み込んだものであることは間違いない。23日の記者会見での発言を受け、台湾外務省は「米国が台湾への固い決意を再確認したこと」への〝感謝〟を示し、「台湾は自己防衛能力の改善に努め、米国や日本など、価値観を共有する国との協力を深めていく」との声明を発表した。

 

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