2022-02-28 経済

ロシアが軽視したウクライナは首都キエフを死守 背景にゼレンスキー大統領がみせた度胸と反骨心

© Photo Credit: Reuters / 達志影像

ロシアのウクライナ侵略が始まって5日。圧倒的な軍備と兵力で当初、首都キエフ陥落は時間の問題とみられた。だが、予想外にウクライナの抵抗は激しく、軍と民兵が首都を死守している。そんなウクライナ人の心の支えになっているのは、同国のゼレンスキー大統領(44)が示した独立国家としての矜持と、愛する国のために自分の命さえ顧みない信念だ。

米紙ワシントン・ポストは「ウクライナのゼレンスキー大統領:戦禍の街角で英雄が誕生した」との見出しで、ゼレンスキー氏の勇気をたたえる記事を特集した。

同紙は、「ゼレンスキー大統領は俳優でコメディアン出身。大統領に選出されるまで政治経験は政治風刺ドラマでウクライナの大統領役を演じたことだけだ」とした上で、「ところが今、彼はその精通したコミュニケーションスキルでソーシャルメディアを使い、余りあるほどの度胸と反骨心、それに必要ならば自分の命を賭す覚悟を示し、人々の心を揺り動かしている。それにより、ゼレンスキー氏は思いもよらずウクライナと世界の守護者となった」と伝えた。

先週末、キエフで抗ロシア戦のために入隊志願した男性はゼレンスキー氏について、「あの人はこれまでの大統領らのように国外に逃げ出さなかった。彼は進むべき道を示してくれた」と同紙に語った。

ゼレンスキー氏は、米国政府の退避を勧める打診を断っていたという。在英ウクライナ大使館が明かしたもので、大統領は米国の申し出に、「戦闘が続いている。必要なのは弾薬であり、(退避のための)乗り物ではない」と応じた。同大使館は「ウクライナ国民は自らの大統領を誇りに思っている」とたたえた。

2019年の大統領選で、大衆の圧倒的人気を集めて当選したゼレンスキー氏だが、そその評価は芳しくなかった。法制改革や汚職への取り組みなどを公約に掲げていたにもかかわらず、進展が遅いことから指導力不足が問われていたのだ。また、ロシアのプーチン大統領との外交交渉でも、すぐに合意を求める姿勢から、ウクライナ国民は弱さを感じていた。

ところが戦時下となった今、ゼレンスキー氏は亡国の危機を前に驚くべき指導力を発揮しているとワシントン・ポストは高く評価する。ロシア政府に向けてぶれることのない直接的なメッセージを発し、ロシア国民に向けてはプーチン氏のウクライナの民主主義国家つぶしに抗議するようSNSで率直に訴えている。

26日夜には、いつ敵の攻撃に遭遇するか分からない中、ラフな私服姿のゼレンスキー氏は、キエフと思われる通りの一角で自撮り動画を撮影。「われわれは皆ここで独立と国家を守るために戦っている。防衛者たちに栄光あれ!ウクライナに栄光あれ!」とのメッセージをSNSで国民に送った。大統領の周りには4人の閣僚たちの姿もあった。

また別の動画では、日中の街角で軍服のようなジャケットを着たゼレンスキー氏が国民に武器を手に取るよう訴え、「われわれは国を守るため孤立無援で戦っている。誰か一緒に戦ってくれるだろうか。正直、誰もいない」とし、NATO(北大西洋条約機構)からも米国からも援軍は期待できないことを示唆。国民に団結して侵略者に立ち向かうよう呼びかけた。

ロシア軍による侵攻が始まると、ウクライナ政府は18~60歳までの男性が国外へ出ることを禁止。27日時点で女性や子供、高齢者ら約20万人が西に国境を接するポーランドやモルドバに避難する中、軍に志願する若者や、手製の火炎瓶や銃を手に戦う民間人が急増している。

米CNNは、「愛する国と人々のために戦う兵と、独裁者を恐れて抗うこともできず、戦地に送られてきた兵のどちらが強いのか。答えは明らかだ」とし、ロシア軍兵士の士気の低さを指摘した。

ウクライナメディアによると、同国内務省当局は27日、第2の都市、東部のハリコフに侵入したロシア軍部隊を激しい戦闘の末、撃退したと表明した。また、CNNなどによると、日本時間28日午前の時点で、ロシアはウクライナ側の必死の抵抗により、どの都市も制圧できておらず、制空権も掌握していないという。

一方、ウクライナ・ロシア両国は28日にベラルーシで停戦交渉を実施することに同意したと報じられるが、先行きは不明だ。

 

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