2022-05-23 アジア

豪総選挙は9年ぶり政権交代で労働党が与党に 異色の新首相アルバニージー氏はどんな人物か

© Photo Credit: AP / 達志影像 Anthony Albanese

注目ポイント

21日投開票のオーストラリア総選挙で、野党・労働党が勝利し、9年ぶりの政権交代が実現した。同党のアンソニー・アルバニージー党首(59)は23日首相に就任し、24日に東京で開かれる日米豪印4か国(クアッド)の首脳会議で外交デビューする。シングルマザーの女手ひとつで育てられたという同国でも異色の新首相アルバニージー氏とはどんな人物なのか―。

豪紙シドニー・モーニング・ヘラルドによると、総選挙は、定数151議席の下院で労働党が72議席を獲得。モリソン首相率いる保守連合(自由党・国民党)の51議席を上回り、第1党となった。続く首班指名選挙で与党の党首が首相に選ばれる制度は日本や英国、カナダ、ニュージーランドと同じだ。

アルバニージー氏は21日夜の勝利演説で、「(シドニー市内)キャンパーダウン地区の公営住宅で育ったシングルマザーの息子が、オーストラリアの首相として今夜みなさんの前に立つことができるということが、わが国がいかに偉大かをよく示している」と国民に語りかけた。

米紙ワシントン・ポストは、豪州の首班指名選挙121年の歴史上、アルバニージー氏が「アングロ・ケルト系(英国とアイルランド)以外の姓を持つ初の候補者」だったとし、「オーストラリアの多様な文化の中で誕生したヒーローだ」と評価。同氏の父親はイタリア系だと指摘した。

また、勝利演説の壇上でアルバニージー氏は、新たな外務大臣となるペニー・ウォン上院議員を紹介した。ウォン氏の父親は中国系マレーシア人で母親は欧州系オーストラリア人だ。

オーストラリアでは1972年に誕生した労働党政権が、人種差別主義を象徴した「白豪主義」から脱局するため、「人種差別禁止法」を制定し、「移民法」や「市民憲章」を改正。英国からの移民は少数派になり、非白人、特に中国系やインド系移民を多く受け入れてきた。にもかかわらず、同国議会は英国系議員比率が高すぎると長らく批判されてきたのだ。

「アングロ・ケルト系の姓ではない人が下院のリーダーになり、ウォンのような姓を持つ人が上院のリーダーになる。それもいいのではないか」とアルバニージー氏は勝利演説でそう語った。

公営住宅で裕福とはお世辞にも言えない母子家庭に育った新首相は、「親はみんな次の世代に自分たち以上のものを望む。私の母は私がより良い生活を願った。自分の人生という旅の中で、私は国民にそんな願いが届くことを期待している」と述べた。

ワシントン・ポスト紙によると、まだ保守的だった60年代に幼少期を過ごしたアルバニージー氏だったが、労働者クラスでカトリックの家庭の〝私生児〟と後ろ指を指されることを恐れた家族からは、「イタリア人の父親は母親と欧州で結婚してすぐ、自動車事故で亡くなった」と聞かされていた。だが、14歳の時、本当は父親と結婚しておらず、健在であることを母親から告げられた。

自伝「アルバニージー/率直に語る」(2016年)によると、アイルランド系オーストラリア人の母親マリアン・エレリ―さんは62年、人生最初で最後となった海外旅行先で、当時クルーズ船の乗務員をしていたカルロ・アルバニージーさんと出会った。欧州や英国、アジアを経由して7か月の旅行を終えてシドニーに帰ってきた時は妊娠4か月だったという。

マリアンさんは63年に一人息子を出産し、キャンパーダウンの公営住宅で両親と暮らした。母親を気遣い、02年に亡くなるまで、アルバニージー氏は会ったことのない父親捜しをしなかったが、労働党政権下の09年、運輸・インフラ担当大臣としてイタリア訪問した際、父親が住む同国南部バルレッタで初対面を果たした。

それから13年。オーストラリアの首相となったアルバニージー氏は24日、東京で開催されるクアッド首脳会議に出席するため来日し、日本の岸田首相、バイデン米大統領、モディ印首相と初顔合わせをする。

外交政策はモリソン前首相が進めたアジア太平洋地域における対中国戦略を継承すると明言している。クワッドは自由や民主主義、法の支配といった基本的価値を共有する4か国の枠組みで、覇権主義的な動きを強める中国をけん制する狙いがある。

今回の会議は、ワクチンなど新型コロナ対策、気候変動、宇宙、サイバー、インフラ、重要・新興技術の6分野で作業部会が設置されていて、それぞれの進捗状況を確認し、さらなる協力に向けた話し合いが予定されている。

 

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