2022-05-20 アジア

スウェーデン、フィンランドNATO加盟にトルコ反対 本当の理由

© Photo Credit: Reuters /達志影像 Erdoğan

注目ポイント

NATO(北大西洋条約機構)への加盟申請を17日に正式決定したスウェーデンとフィンランド。加盟にはメンバー30か国による全会一致の賛成が必要で、米国や欧州各国が歓迎の意向を示すなか、NATO古参トルコのエルドアン政権が反対を表明している。欧米が説得に乗り出しているが、先行きは不明だ。トルコの思惑は一体何なのか、専門家が解説した。

スウェーデンは過去200年間、軍事的中立を国是とし、フィンランドは戦後、〝フィンランド化〟と揶揄されながらも、西側と軍事同盟を結ばないことでロシアを刺激することを避けてきた。ところが2月24日、ロシアがウクライナに侵攻したことで、欧州の安全保障地図は大きく塗り替えられた。

北欧両国では今や7割を超える国民がNATO加盟を支持。それまで軍事同盟に消極的だった両国民の民意は、ウクライナの悲劇を目の当たりにして一変した。

欧州政治に詳しい米ミシガン大学のロナルド・サニー教授によると、エルドアン大統領(68)がスウェーデンとフィンランドの加盟に反対する表向きの理由は、両国が「テロリストを支援している」と主張していると説明。クルド人の武装集団「クルディスタン労働者党(PKK)」の関係者らを保護し、住民権を与えていることに強く反発しているというのだ。

クルド人は中東で暮らす独立国家を持たない民族で、シリア、イラク、イランのほか、トルコにも数百万人が少数民族として居住し、エルドアン政権下で迫害を受けていると同教授は説明。PKKに関しては、NATO同盟国であるトルコに表面上は同調し、米国や欧州連合(EU)もテロ組織と認定しているが、スウェーデンとフィンランドは人道的見地からクルド人のトルコへの引き渡しを拒否していると解説した。

エルドアン氏はスウェーデンをテロリズムの〝孵(ふ)化場〟と呼び、北欧の両国ともにテロ組織に対して「はっきりと明白な態度と示していない」と批判。「そういう国をどう信じろというのだ」と憤った。

さらにエルドアン氏を激怒させたのは、スウェーデンとフィンランドがトルコで2016年に起きたクーデター未遂事件に関係があったとされる「ギュレン運動」の活動家らを支援していることだとサニー教授は指摘する。「ギュレン運動」とは、トルコにおけるイスラム道徳をベースにする市民活動で、宗教家フェトフッラー・ギュレン尊師(81)の指導で1960年末に始まった。

国内外での教育、トルコ文化の普及、宗教対話や貧困解決への支援が評価され、ギュレン氏の信者らはエルドアン氏と良好な関係を築いたが、ギュレン運動が力を持つようになると、エルドアン氏は運動を阻害した。その後、クーデター未遂事件が勃発し、エルドアン氏はギュレン運動の信者らが関係してとして約4万人を逮捕、11万人の公務員を解雇。ギュレン氏は米国に亡命した。

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい