注目ポイント
コロナ禍により世界中で日常生活が一変した中、破竹の勢いで世界を席巻した米動画配信最大手ネットフリックスが、ここにきて大苦戦している。ここ10年で初めて会員が減り、純利益も減少した。一方、後発組の筆頭株Disney+(ディズニープラス)は今年の第1四半期だけで新規加入790万世帯を獲得し、世界全体で8760万世帯に達した。そのディズニープラスもまた、経費高騰などで番組制作に支障をきたしているというのだ。サブスクリプション業界の現状を追った。
米技術系ニュースサイト「ザ・ヴァージ」によると、ディズニープラスは先週、ディズニー傘下のHuluやESPNプラスを含めると、グループ全体では1月時点で1億9640万世帯だったものが、4月には2億500万世帯に達したと発表した。これはネットフリックスの2億2200万世帯に迫る数字だ。
急成長するディズニープラスだが、同時に深刻な問題も生じているという。
同ニュースサイトによると、実は猛烈な勢いで巨額の支出が続いているというのだ。製作、宣伝、技術機材などの費用の高騰によるもので、今後もその傾向は継続するとディズニーはみている。だからといってサブスク料金を値上げすれば、ネットフリックスのように会員を失うことになる。
そのためディズニーは近く番組内にCMを入れるという苦肉の策に打って出ることになりそうだ。米芸能誌「バラエティ」によると、ディズニープラスは1時間以内の映画や番組に計4分間のCMの挿入を年内に始めるという。
バラエティ誌は、4分間というCM時間が競合他社と同様か、それより短いと指摘する。例えば、米NBCの動画配信サービス、ピーコックは1時間の番組でCMは5分以内とし、ワーナー・ブラザース・ディスカバリー傘下HBO MAXはディズニープラスと同じ4分間だ。
同誌はまた、ディズニープラスはCM内容についても、ファミリー向けコンテンツを意識して慎重だとし、大人が対象のアルコール商品や政治がらみのCMは流さないと伝えた。
一方、1997年の設立以来となる苦戦を強いられているのがネットフリックスだ。同社は先月、今年の第1四半期の業績を発表し、収入は78億ドル(約1兆円)だったが純利益は6%減の15億9744万ドル(約2053億円)、会員数は前期比較で20万世帯減少したことを明らかにした。四半期ごとの比較で会員が減ったのは、ここ10年以上にわたって初めて。さらに、今年の第2四半期には200万世帯減少と予想しているというから、事態は深刻だ。
これまでネットフリックの成長が著しかったことから、マイナスに転じたことは市場関係者にとっても衝撃で、決算発表後は1日で株価が35%暴落した。
今年第1四半期の会員減の内訳は、ロシアによるウクライナ侵攻によりロシア国内で事業を停止した結果、過去3か月で同国の会員が70万減、米国とカナダの60万減に加え、欧州、中東、アフリカでも30万減で、唯一アジア太平洋地域で会員が増加したことで差し引きマイナス20万世帯となった。