2022-05-19 アジア

インドネシア議会がイスラム派の妨害を乗り越えて6年ぶりに性暴力犯罪法を成立

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注目ポイント

インドネシアでは性的暴力に対する訴えが増加しているにもかかわらず、具体的な法的枠組みに欠如があるため起訴が複雑で、多くの被害者は裁判中に辱めを受けることを恐れ発言する勇気を持てないという。

インドネシア議会は4月12日に社会が待ち望んでいた性的暴力問題を解決する法案を成立させたとロイター通信が伝えた。被害者に法的枠組みを提供し、性的暴力を常に「自分事」と見なす国として正義を得ることを目的としているという。

世界最大のイスラム教国であるインドネシアの国会では、6年間の審議の末、国内の一部の保守的イスラム教団体の反対を押し切って、本議会で過半数の議員がこの法案を支持した。

「私たちは、この法律の施行が性的暴力事件の解決になってほしいと願っている」と国会議長のプアン・マハラニ氏は語った。

この法案は社会活動関係者から広く歓迎されたものの、一方で異議を唱える人もいる。この規範は範囲が限られており、一部の性犯罪のみを対象としており、強姦に対する具体的な規定は削除され、関係者は後に他の法案に盛り込むと述べている。

性暴力の被害者を支援してきたジェンテラ・スクールの法律専門家アスフィナワティ氏は「これは確かな一歩前進だ」と述べ、刑法における現在の強姦の定義をより明確にするべきだと付け加えた。

この法律の最終案では、婚姻の内外を問わず、身体に対する性的虐待の罪は最大で禁固12年、性的搾取の罪は最大で禁固15年と規定されており、児童婚を含む強制婚姻罪は9年の禁固刑、同意のない性的コンテンツの散布は4年の禁固刑に処せられる。また、有罪判決を受けた加害者に賠償金を支払うよう裁判所に求めるとともに、政府に対しては、被害者からの相談に応じるように求めている。一方、以前の提案では、もともと妊娠中絶を対象とする法案や、強姦の定義を明確にするための法案が提出されていた。

法案の展開過程を振り返ってみると、まず10年前にインドネシアの女性保護委員会と市民団体から法制化の構想が持ち上がり、2016年に法案が国会に提出された。そして今年1月、インドネシアのジョコウィ大統領は、性暴力事件の提訴と有罪判決の確保を容易にすることを目的としたこの新法案を早急に制定するように政府に要求した。

大多数の国会議員がこの法案を支持したが、国会ではイスラム保守系政党、福祉正義党(PKS)が、結婚以外の性行為は規制されるべきであると主張し、「異常な」性的指向と呼ばれる類の性的関係の禁止を求め、この法案に反対している。

 

参考記事

Indonesia's parliament passes landmark bill on sexual violence | Reuters

 


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