2022-05-18 アジア

北朝鮮で新型コロナの感染者が171万に 惨劇が逆に金正恩政権盤石化の好機とも

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注目ポイント

先週、いきなり新型コロナウイルスの感染爆発を公表した北朝鮮。「最重要国家事案」として緊急対策を推し進める金正恩総書記にとって、パンデミックは「それほど悪い知らせではない」との見方もある。北朝鮮全土をロックダウン(都市封鎖)することで、これまで以上に政権の盤石化を図る絶好の機会になるからだという。

米リベラル系ニュースサイト「デイリー・ビースト」は、コロナ禍が〝絶好の機会〟になる理由として、都市封鎖など厳格な規制を敷くことにより、正恩氏は理由の如何に関わらず違反者を逮捕することで絶対的権力を誇示し、パンデミックによる惨劇は全て保健当局者らに責任を押し付けさえすれば済むからだと論じた。

実際、正恩氏は15日の防疫対策を協議した会議で、「国が調達する医薬品が、薬局を通じて住民に届いていない」とし、内閣や保健当局者を「危機状況への認識を正しく持つことができず、積極的に取り組んでいないと叱咤した」と国営・朝鮮中央通信が報じた。

また、会議後に平壌の薬局を視察した正恩氏は、「陳列場所以外に薬の保管場所もない劣悪な状態だ。販売員の衛生服も整っておらず、基準に到達していない」と、公衆衛生当局を糾弾したという。

朝鮮中央通信は18日、新たな発熱者は5月17日午後6時までの24時間で約23万2880人に上り、4月下旬の感染拡大から累計で171万5950人、死者62人になったと伝えた。だが、北朝鮮にPCR検査キットなどはほぼ存在せず、検査能力が極めて限られている。そのため公表されるデータを確認することはできないとし、韓国の情報当局は、実態は公表されている数字の5~6倍はいると推定している。

米シンクタンク「民主主義防衛財団」の北朝鮮専門家デビッド・マックスウェル上級研究員はデイリー・ビーストに、「絶対的な金一族体制で神聖化された正恩は、どんな批判も受け入れることはない」とし、正恩氏の「政策決定は悲劇をより悪化させている。彼にとって最も重要なものは、北朝鮮人民より核とミサイル開発だから」と解説した。

その結果、感染症医療を専門とする韓国・ソウル大の呉明燉(オ・ミョンドン)教授は、オミクロン株感染者が急増した香港などのデータや北朝鮮の人口構成などを基に、今回のコロナ禍の死者が3万4500人以上になり得ると推計した。

「比較的毒性が弱いオミクロン株でもワクチンを接種していない高齢者の死亡率は高い」と同教授は説明。北朝鮮が発表している累計死亡者数を疑問視する見方もあるが、呉氏は「感染と死亡には2~4週間の時差があり得る」とし、今後、死者が急増する可能性があるとの認識を示した。

北朝鮮は当初から途上国などにワクチンを分配する国際的な枠組み「COVAX(コバックス)」からのワクチン提供を拒否し、友好国である中国、ロシアからの提供も拒んできた。そんな「ワクチン接種率ゼロ%」の北朝鮮では、朝鮮労働党機関紙「労働新聞」が16日、「隔離時の心得」や「症状が出たときの治療法」などを特集。「ウイルスより危険な敵は非科学的な恐怖と信念の不足、弱い意志だ」などと伝えた。

元韓国在住の米国務省上級外交官デビッド・シュトラウブ氏はデイリー・ビーストに、「正恩は常に権力を掌握できているか不安に感じている。それは自分への本当の脅威は、彼が主張する米国ではなく、自国民だからだ」と述べた。

その上で、「これまで叔父や母親違いの兄を殺害するなど、権力者として粛清を行ってきた。そして今度はパンデミックを利用してこの2年間は完全な鎖国を続けたが、コロナ禍は彼にとって国内の新たな脅威となった」と分析した。

シュトラウブ氏は、情報をコントロールすることで、正恩氏は「国際社会からワクチン支援を受けるか拒否するのか、いずれにしても国内でうまく行かないことは、内外を問わず全て他者のせいにするだろう」と結論付けた。

 

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