2022-02-21 経済

ワリエワのドーピング問題は大会最大の〝負の遺産〟不可解判定やスキャンダル続出の北京冬季五輪閉会

© Photo Credit: Reuters / 達志影像

17日間の熱戦を終え、北京五輪が20日閉幕した。終わってみれば日本は金3個を含むメダル18個を獲得し、冬季五輪では過去最多だった平昌の13個を大きく上回った。一方、今大会は不可解な判定やスキャンダルが続出する五輪でもあった。米NBCシカゴは「北京五輪の最も物議を醸した瞬間」との見出しで大会を振り返った。

ウイグル人聖火ランナー

最初に違和感を与えたのは、開会式で新疆ウイグル自治区出身のウイグル族を代表し、クロスカントリースキーのジニゲル・イラムジャン(20)に最終聖火ランナーという大役を与えたことだった。米国は中国に対し、少数派民族のウイグル族に対する虐待をジェノサイド(大量虐殺)に等しいと主張。昨年12月には北京五輪への「外交的ボイコット」を決め、オーストラリアや英国、カナダなどがそれに続いた。中国側は一貫して西側の批判内容を否定。最終聖火ランナーの1人にウイグル人を抜擢したのも、中国政府の政治的意図が明確に示されたものだった。

隔離施設のまずい食事

女子バイアスロンのヴァレリヤ・ヴァスネツォワ(ROC=ロシア・オリンピック委員)は、新型コロナウイルスのPCR検査で陽性になり隔離用ホテルに収容された。だが、配給された食事について「これは食べ物じゃない」などとインスタグラムに投稿。続けて「朝食、昼食、夕食、こればかりでもう5日間」とし、トレイに乗った茹でただけのマカロニと茶色いソース、少量の焦げた肉のようなものや、少しのジャガイモが写った画像を添えた。ヴァスネツォワは「体重が落ちて、骨が出てきた。これ以外食べ物がない」と助けを求めた。

食事の酷さや部屋の狭さ、不潔さなど、多くの苦情がコロナ感染により隔離されたほかの選手からもSNSを通じて発信され、あわてた北京五輪組織委員会は後日、環境を改善した。

平野歩夢の大技に不可解判定

NBCはスノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢(23)の〝不可解判定〟についても言及。平野は決勝2本目で、縦3回転、横4回転の大技「トリプルコーク1440」を世界で初めて五輪の舞台で決めにもかかわらず、91・75点の低評価でスコット・ジェームズ(豪州)の92・50点に及ばず、2位止まりだった。

だが、3本目では同じ技にさらに高さを加えて96・00ポイントを獲得し大逆転で金メダルに輝いた。この2本目の判定については、各国の選手仲間や実況解説の専門家らから「どこを見ているんだ」などと批判が殺到。責任審判は後日、カメラアングルや瞬時に判定しなければならないことを〝誤審〟の要因に挙げた。

ワリエワのドーピング問題

今大会最大の〝負の遺産〟になったのは、女子フィギュアスケートのカミラ・ワリエワ(15=ROC)のドーピング違反問題だ。フィギュア団体で1位を決めたROCだったが、その直後、ワリエワが昨年12月25日に受けたドーピング検査で違法薬物が検出されたことが判明。心臓病の高齢患者に処方されるトリメタジジンが検出された。これはアスリートには禁止薬物に指定されているのだ。

今大会期間中の検査では陰性だったため、ワリエワの女子シングルの出場をめぐり、スポーツ仲裁裁判所(CAS)は、継続出場を認める裁定を下した。16歳未満の選手に柔軟な対応をとる「要保護者」と位置づけている世界反ドーピング機関(WADA)の規定などを重視したものだった。この決定には多くの反対意見が集まり、今後に禍根を残すことになりそうだ。ワリエワの女子シングル・フリーでの〝絶望〟的な演技と結果は誰もが知るところだ。

選手に立ちはだかった「ルール40」

女子スノーボードのジュリア・マリノ(米国)は、スロープスタイルで銀メダルを獲得。8日後のビッグエアーにも出場を予定していたが、急きょ出場を取り止めた。理由はオリンピック憲章第40条。オリンピック期間中のマーケティングに関する規則で、「ルール40」と呼ばれるものだ。

NBCによると、マリノは自身のスポンサーである高級ファッションブランド「プラダ」の文字が裏面に大きくペイントされたボードの使用を許可しないと通告され、棄権に追いやられた。本人は「スロープでは問題がなかったのに、IOCからビックエアーではボードを承認できないと言われた。ロゴを隠さないと失格になると言われ、ロゴをペンで塗りつぶすよう言われた」とインスタグラムのストーリーに投稿した。

指示通りロゴを塗りつぶしたボードで滑ってみたが、ジャンプで十分なスピードが出ないことなどから出場をあきらめた。

中国をめぐる〝疑惑の判定〟

ほかにも今大会で物議を醸したのが、開催国と韓国の対立だ。開会式で韓国の伝統衣装を着た女性が中国国旗を運ぶ演出について、韓国の政界やメディアは「韓国文化を奪った」として激しく反発。中国側は国内の少数民族との融和をアピールする狙いだったようだが、韓国は「朝鮮半島を中国の一部だとして属国扱いしている」として嚙みついたのだ。

また、韓国がお家芸と自負するスピードスケート・ショートトラックで、自国選手が失格判定を受け、中国選手が金、銀メダルを獲得したため、「不公正だ」などと怒りが噴出した。これはショートトラック男子1000メートル準決勝の1組で、韓国の黄大憲(ファン・デホン)が先頭でゴール。ところが、ビデオ判定でまさかの失格となり、2、3番手の中国選手が決勝に進んだ。2組でも2着になった李俊瑞(イ・ジュンソ)が失格判定を受け、韓国勢は準決勝敗退。中国選手2人が金と銀を獲得した。

韓国紙・中央日報は「度を越した不公正判定」と怒りを爆発させ、韓国選手団は判定をめぐり、スポーツ仲裁裁判所(CAS)に提訴すると発表した。

中国をめぐる〝疑惑の判定〟は、19日のフィギュアスケートペアで優勝した中国ペアの採点も論議を呼んでいる。金メダルは中国の隋文静・韓聡組で、銀はROCのエフゲニア・タラソワ、ウジミール・モロゾフ組だった。両ペアの得点差はわずか0・63。ロシアペアは完璧な演技をこなし、中国ペアにはジャンプミスがあった。

これについてロシアのスポーツ紙「チャンピオナット」はジャッジスコアを分析。「中国人審判はロシアペアより中国ペアに5点も多く得点をつけた」として「自国びいき」を批判。ロシア人記者は試合後の記者会見で中国ペアに「自国のオリンピックで金メダルを獲得するためにジャッジが役に立ったか」と辛らつな質問をしたことも話題になった。

 

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