2022-02-18 経済

ミサイル発射実験と祝賀行事で〝王朝権威〟誇示 北朝鮮・金正恩氏にとって今年は大きな節目の年

© Photo Credit: Reuters / 達志影像

北朝鮮の故金正日(キム・ジョンイル)朝鮮労働党総書記の生誕80年を祝う「中央報告大会」が今週、同国北部の白頭山(ペクトゥサン)のふもとの野外会場で行われた。零下15度という厳寒の中、数百人の出席者は手袋もなしに、直立不動で金正恩(キム・ジョンウン)総書記の長い演説に耐えた。

米ニュースサイト「インサイダー」によると、大会が開催されたのは人口3万人ほどの三池淵(サムジヨン)で、正日氏が抗日戦最中の1942年に生まれた〝革命の聖地〟と位置付けられている。ただし、旧ソ連の資料は、正日氏が実際に生まれたのはロシアの極東ハバロフスクだとしている。

北朝鮮ウォッチャーとして知られる西側の独立系ニュースサイト「NKニュース」によると、出席者が身も凍るような寒空の下で微動だにせず立ち続ける中、ステージの長机を前に着席した正恩氏や党トップらの足元にはヒーター付きレッドカーペットが敷かれていたようだとしている。

同ニュースは、正恩氏は約30分にわたる演説で、2011年に死亡した父・正日氏や祖父で北朝鮮の初代最高指導者・金日成(キム・イルソン)氏を称え、正恩氏の妹・金与正(キム・ヨジョン)党副部長も出席したと伝えた。

三池淵では夜に花火が打ち上げられ、平壌でも正日氏の功績をたたえる演説会が開かれたり、記念硬貨の発行が決定するなど、祝賀ムードを演出。また、4月15日には日成氏の生誕110年行事も迫っている。

北朝鮮専門家らは〝金王朝〟3代目の正恩氏にとって、今年は大きな節目の年になるだろうと推測する。正日氏の死去に伴い権力を引き継いで10年が過ぎ、正恩体制の権威を示すため、年頭から国内外にさまざまなアピールを続けている。

中でも顕著なのが核攻撃能力の誇示だ。新年早々から相次いでミサイル発射実験を繰り返し、日本や韓国、米国を挑発している。一方、かかった費用は1月だけでも4000万~6500万ドル(約46~75億円)と推定され、米国営放送「ボイス・オブ・アメリカ(VOA)」は、慢性的な食料不足が続く北朝鮮で、その費用は国民半月分の食糧費に相当すると分析した。

さらに、北朝鮮経済に詳しい米CIA(中央情報局)の元アナリスト、ウィリアム・ブラウン氏はVOAに、「発射実験はミサイル開発の一部であり、核・ミサイルシステム開発に巨額の費用がかかっている。発射実験自体は全体の小さな部分に過ぎない」と指摘した。

コロナ禍によりさらに国内経済が疲弊する中、「北朝鮮はアジア最貧国にもかかわらず、国防予算に国内総生産(GDP)の20~30%ほどを投入している」とCIAは分析する。そんな北朝鮮が外貨稼ぎの新たな手段として手を染めたのが暗号資産のハッキングだ。

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