注目ポイント
今年4月から新型コロナ新規感染者が急増した台湾は、ゼロコロナからウィズコロナに政策を転換したが、小中高のオンライン授業に関して教育局や学校現場は右往左往し、保護者や子供たちに少なからぬ混乱を招いた。各家庭の実情を鑑み、きめ細かな対策を施そうとしたが、それが却って朝令暮改になって保護者は不満が募ったようである。ただ昨年の経験から、貧困対策や地域間格差はかなり改善された。
≪ウィズコロナへの転換≫
今年の3月17日までは、1日当たりの新規陽性者の数が0人かせいぜい5人程度であった新型コロナ防疫優等生の台湾も、4月1日には100人を超え、その後、爆発的に感染が拡大、同15日1209人、24日5千人超え、28日1万人超え、そして5月3日にはついに2万人を超えた。ほぼ1年前の5月から6月に台湾は初めて1日当たり500~600人の新規感染者を出し、各方面で様々な影響が出た。レストラン、屋台、食堂など店内飲食禁止、各種イベント中止、在宅勤務推進、オンライン授業への切り替え、スーパーや病院、テイクアウトの店などに入るたびに、接触者のトレースを可能にするためのQRコードスキャン、外出自粛などなど、国民は未曽有の行動制限を強いられた。しかし、今春、ゼロコロナからウィズコロナへと政策転換した政府は、新規感染者が2万人を超えても、新たな行動制限はしていない。台湾のブースター接種は6割を超え、重症化率は1割未満ではあるものの、感染者と濃厚接触者が急増したため、QRコードスキャンをしても接触者の追跡調査に割く人員が絶対的に足らなくなってきており、そのため、QRコードスキャンに替わって、感染者との接触歴を知らせてくれるアプリ「台湾社交距離APP」が前面に押し出しされた。

隔離された先生のクラスのオンライン授業(筆者撮影)
≪去年は一斉にオンライン授業実施≫
去年、感染者数が急増した時、台湾では様々な地区でオンライン授業が実施されたが、いろいろ不慣れな点も多く、特に中南部の山岳地帯や原住民居住区などでは、貧困やインフラ未整備、タブレットなどの端末を持っていないなどの理由でうまく機能しないケースが多々あった。その後、全学童に行き届くよう、オンライン授業を受けるための端末を企業が寄付したり、担任教師が生徒に、親が出勤した後でも自分で使える端末を持っているかどうかの調査をしたりして、多少の改善が試みられた。また、親が工事現場や観光施設など、屋外で働く人も多く、小学生の子供だけを家に残しておくことに不安があった。

自宅でオンライン授業をする小学生(筆者提供)

自宅でオンライン授業をする小学生(筆者提供)
≪今年のオンライン授業は足並み揃わず≫
クラス閉鎖やオンライン授業をするかどうか、或いはその条件、方法などが、県によって、市によって、学校によって、また、週によってもバラバラである。例えば台北市では、中学・高校の授業が1週間ほど実験的にオンライン授業に切り替わった。その後の判断は学校に委ねられたが、基本的には感染者がいなければ対面授業も可、と言うふうに対策が徹底しなかった。同時に高校入試や大学入試を控えた学年では受験勉強をやめることはできず、結局、対面授業を続けてほしいと言う保護者の要望に応えて、中高では対面授業をしているところが多い。しかし一人でも感染者が出たら、該当クラス全員が、3日間の在宅隔離と4日間の活動自粛をしなければならず、授業は必然的にオンライン授業に切り替わる。これは「3+4政策」と呼ばれる。このように、対面授業とオンライン授業の切り替えが頻繁に行われ、そのため保護者は必要以上に疲れを感じている。一方、小学生はワクチンを接種していないので感染リスクが高く、オンライン授業を望む保護者の声は多い。