3000億ドル(約34兆6000億円)もの負債を抱える不動産開発大手・中国恒大集団の経営破綻危機など、不動産バブルの崩壊が懸念される中国。世界が注視する中、米経済ニュースサイト「インサイダー」は同国政府がこれまで巨額債務を抱えた企業の“メルトダウン”にどう介入し、処理してきたかを検証。中国恒大集団問題の今後の展開を占った。
ケース①ニューヨークの高級ホテルも史上最高額で買収
最もよく知られる中国巨大企業の経営破綻が安邦保険集団だ。もとは2004年に地方の自動車保険会社として発足。創業者は中国の元最高指導者・鄧小平氏の孫娘と結婚し、鄧一族と強いつながりを持つ呉小暉CEO(最高経営責任者)だ。
同氏は中国国内の債務先行による強力な消費動向をバネに設立から10年で急成長し、2014年には米ニューヨーク・マンハッタンの高級ホテル「ウォルドルフ=アストリア」をヒルトンから約20億ドル(約2300億円)で買収。米国史上最高額のホテル買収劇となるなど、まさに破竹の勢いだった。
ロイター通信によると、安邦保険集団の資産は18年には約2兆元(約36兆円)に膨れ上がったが、その前年、呉氏は突然、警察当局により拘束され、18年の判決で詐欺や職権乱用の罪で懲役18年の実刑が言い渡された。
呉氏というカリスマ的リーダーの失脚で安邦保険集団は急失速。中国政府は19年に事実上破産状態の同集団を公的管理下に置き、経営再建を開始。コアとなる保険及び資産管理部門は政府が作った受け皿会社「大家保険」に移行し、所有するホテルなどの海外資産の売却を急いだ。
そして昨年、保険規制当局が2年間の管理期間を終え、現在は大家保険の売却を進めている。
ケース②地方銀行によるドミノ式金融危機への懸念
内モンゴル自治区包頭市の都市商業銀行である包商銀行も政府の公的管理下に置かれ、事実上国有化された企業だ。
同行が17年、最後に公表した財務諸表によると、総資産は5760億元(約10兆4000億円)だった。ところが19年5月、重大な信用リスクが起きたとして中国政府の金融当局が突如、同行を管理下に置いたのだ。
包商銀行は中国恒大集団や安邦保険集団と比較すると規模は小さいものの、中国の地方銀行で発生した不良債権問題は、同様の問題が中国各地で起きている可能性があり、ドミノ式に金融危機が発生するのではとの懸念が世界規模で広がったための政府介入だったとニュースサイトのインサイダーは指摘している。
政府主導の再建計画により、新たに設立された「メンシャン(Mengshang)銀行」と香港市場で株式公開している「徽商銀行」が共同で包商銀行の資産や負債を引き継いだ。また、内モンゴル自治区政府など公的投資機関がメンシャン銀行に資金注入。中国人民銀行によると、これにより大口債権者への約9割の債務が履行されたとしている。