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ロシアのウクライナ侵攻の戦況が大きく変わりつつある。西側から最新鋭の兵器を含む軍事支援を受けるウクライナ軍の反転攻勢に対して、ロシア軍はウクライナ第2の都市ハリコフから敗走し、侵攻の主目標と位置付ける東部ドンバス地方でも前進できていない。一方、モスクワではプーチン大統領が重病を抱える中、クーデター計画が進行中だとウクライナ軍情報局トップが英メディアに語り、欧米の報道機関が15日、一斉に報じた。
ドンバス地方の北に位置するハリコフ市を含むハリコフ州をめぐる攻防戦では、「ロシア軍が敗退した」と米シンクタンク「戦争研究所」が13日に明らかにした。ウクライナのゼレンスキー大統領は同日、同州で1015の集落を奪還したと発表した。
英国防省も同日、ドンバス地方ルガンスク州のドネツク川を渡っていたロシア軍がウクライナ軍の猛攻に遭い、壊滅的被害を受けたと発表。ロシア軍は戦車や装甲車など73両や兵員1000人を含む、少なくとも1個大隊戦術群(BTG)に相当する戦力を失ったとした。別の情報筋によると、これはロシア軍がウクライナに投入した125のBTGの一つで、わずか30分間ほどの待ち伏せ攻撃で撃破されたという。
同省はまた、ロシア軍は侵攻当初に投入した地上戦力の3分の1をすでに喪失した可能性が高いとの分析を示し、「ドンバス地方への攻撃は予定よりも大幅に遅れている。この1か月間、実質的な領土の獲得はない」ことを明らかにした。
そんな中、ウクライナ軍情報局トップ、キリーロ・ブダノフ少将(36)は14日、英ニュース専門局スカイニュースとの独占インタビューに応じた。同氏は、プーチン氏排除を狙ったクーデターが現在進行中で、「止めることはできない」と明言。転換期は8月中旬に訪れるとした上で、戦争は今年末までに終わると言い切った。
スカイニュースはブダノフ氏の発言について、「これまでウクライナ当局が明らかにした戦況予測の中で最も具体的で、楽観的なものだ」と指摘。ブダノフ氏は、プーチン氏ががんの病状が深刻で、その裏でクーデター計画が進んでいると主張した。
プーチン氏の〝特別軍事作戦〟が始まった2月24日以前、ウクライナ政府内では誰もがロシア軍の侵攻を懐疑的にみていたが、ブダノフ氏だけは現実に起きることを予測していたという。そのブダノフ氏はこの戦争が8月中旬に転換期を迎えるとし、「戦闘行動は今年末までにはほとんど終わる」との見通しを示し、「その結果、われわれはこれまで失ったドンバスやクリミアを含むウクライナ領土を奪還するだろう」と述べた。
スカイニュースはブダノフ氏について、「一国の軍事情報機関のトップが36歳というのは驚くほど若い」と指摘。「専門分野について淡々と明解に発言する」と評し、「ほとんど表情を変えないが、英語で『私は楽観主義者』と話した時だけ笑顔を見せた」と続けた。
ロシア軍は東部ドンバス地方に集中するため、戦力を移動させるという戦略に変化はないが、すでに甚大な損失を受けていると同氏は現在の戦況を解説。だが、ウクライナ軍の被害については言及しなかった。