開票日カウントダウン

選挙ページへ

2022-05-12 アジア

経済破綻したスリランカで広がる流血暴動 大統領一族がはまった中国「債務の罠」とは

© Photo Credit: AP / 達志影像

注目ポイント

インド洋の島国スリランカが史上最悪の経済危機に直面し、政情不安が拡大している。長年にわたり中国依存を続けた結果、「債務の罠」にはまったラジャパクサ政権に対する国民の不満が爆発。同国最大の都市コロンボでは今週、大規模な暴動が勃発した。首相は辞任したが抗議デモは収まらず、政府は治安部隊に対して暴徒を見つけ次第、銃撃する命令を出した。

英BBCによるとコロンボでは9日、ゴタバヤ・ラジャパクサ大統領(72)の兄であるマヒンダ・ラジャパクサ首相(76)が辞任すると、デモ参加者らが首相公邸になだれ込もうとした。公邸前では政府支持者とデモ参加者たちの激しい衝突が発生。デモ参加者らはバスに火を放つなど暴徒化した。その後、デモの主な開催場所となってきた海沿いの緑地ゴール・フェイス・グリーンでは衝突が続いた。

政府発表によると、この騒乱により国会議員1人と警察官2人を含む8人が死亡、219人が負傷し、建物100件以上と車両60台以上が放火された。そのため国防省は10日、治安部隊に対し、略奪者や器物を損壊する者への銃の使用を認め、数万人規模の陸、海、空軍兵士からなる鎮圧部隊をコロンボなどの通りに配置し、厳戒態勢を敷いている。

だが、米CNNによると、11日時点で38人の国会議員の自宅が暴徒により放火され、別の議員75人の家も襲撃されたという。

スリランカが1948年に英国から独立して以来、最悪の経済危機となり、国民は物価の急激な高騰により生活苦を余儀なくされ、国を私物化したとしてラジャパクサ兄弟とその一族の退陣を求めて反政府デモを展開している。弟のゴタバヤ氏は2019年に大統領に就任したが、05~15年は兄マヒンダ氏が大統領を務め、一族で政府要職を独占してきた。

BBCによると、スリランカの外貨準備高は事実上枯渇し、国民は3月以降、輸入食料品や医薬品などの必需品が不足している。加えてロシアのウクライナ侵攻により燃料価格も一気に上昇。通貨スリランカルピーは年初から対ドルレートで4割近く下落。政府は先月、国内経済に対処するため対外債務の大半の返済停止を発表し、「部分デフォルト(債務不履行)」となった。現在は国際通貨基金(IMF)などとの協議で危機回避を模索している。

それでも政府は、今回の経済危機が重要な外貨獲得源である観光業が新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で壊滅的な打撃を受けたことが原因だと主張。だが、多くの専門家は経済対策の失敗を指摘している。

その最たるものが中国依存だ。スリランカの対外債務は500億ドル(約6兆4800億円)超で、表面上は約1割が対中債務となっているが、中国企業などを迂回した多額の「隠れ債務」の存在が浮き彫りになり、中国の「債務の罠」に陥ったと指摘される。

中国はスリランカに対し、広域経済圏構想「一帯一路」の要衝として投融資を展開。進出する中国企業の利益を生み、もし返済不能に陥っても、引き換えにインフラ権益を手に入れ、影響力を強化できるからだ。実際、17年にはスリランカ南部ハンバントタ港の開発融資の返済が滞り、中国には99年間の港湾運営権が譲渡されている。

⎯  続きを読む  ⎯

あわせて読みたい