400年位前、ある村の北側にある山頂に、鷲(オウムとの説あり)の形をした大きな岩があった。その岩はしょっちゅう村人に毒気を吐いたため、鄭成功はその岩の頭の部分を爆破して落した。それ以来村人に害を与えるものはなくなった。鷲もオウム(鸚鵡)も鶯(うぐいす)も、中国語の発音が「イン」で同じだから、村は鶯歌(インガー)と呼ばれるようになった。18世紀初頭、鶯歌の尖山で良質の粘土が採れるようになり、焼き窯が作られ、焼き物の町として発展が始まった。
鶯歌は台北の西南にあり、台北からバスで約1時間、各駅停車の電車なら約30分で行けるのどかな町である。台湾政府が推進する国旅券(日本のGO TO トラベルに相当、額は1000元≒4400円、国籍は問わないのでありがたい)が当たったので、筆者は先日、鶯歌に行ってきた。
© 頭が吹き飛ばされた鶯歌石 筆者撮影
© ヤシ並木が美しい鶯歌陶瓷老街 筆者撮影
日本には、瀬戸、益子、伊万里、有田、唐津など、焼き物で発展してきた町が多い。ここ台湾では、陶器と言えば鶯歌、鶯歌と言えば陶器というくらい、鶯歌は有名な陶器の町である。鶯歌陶瓷老街(インガータオツーラオジエ)は、ヤシの並木道に沿って多くの店が並んでいる風情のある道である。店先には漬物や老酒を入れておけそうな大きな甕や壺、様々な模様を施した花瓶や鉢、急須や湯飲み、装飾品、玩具、各種食器など、ジャンルを制限せず、色とりどりな陶器が所狭しと並んでいる。
陶器好きにはたまらない道であろう。値段は、当然のことながら、ピンからキリまである。形がユニークで、子供に喜ばれそうな可愛い模様の皿も品揃えがとても豊富で、選ぶのに時間がかかるかもしれない。肉まんの形をした調味料入れセットはおしゃれな部屋やこぎれいな店に似合いそうである。
鶯歌陶瓷老街の半ばには、陶芸教室を併設している店があって、手ごろな値段で陶芸体験ができる。お皿でもマグカップでも好みのものが選べて、個別指導で丁寧に教えてくれる。模様や文字も自由に入れることができるので、世界にひとつしかないものが作れる。
今回、筆者はお土産に鳥の形をした陶器の笛を買ってきた。水を入れて吹くと甲高い鳥の鳴き声が出る。惜しいことにウグイスの鳴き声ではなかったが、3つ50元(≒220円)で安かったし、荷物にならないので、うちの猫と遊ぶために買って持って帰ってきた。
また、鶯歌陶瓷老街にはコーヒーショップやレストランもあるので、時間と興味のある人は一日中ゆっくりと、陶器の町鶯歌を散策するのも優雅な過ごし方であろう。