2022-05-10 アジア

「プーチンに残されたのは勝利という信仰」 亡命したロシア人編集長が戦勝記念日に解説

© Photo Credit: Reuters / 達志影像

注目ポイント

ロシアの対ドイツ戦勝記念日の9日、英紙ガーディアンなど複数の欧州メディアは、ロシアで発行禁止となった独立系新聞ノーヴァヤ・ガゼータの記者らが西側で立ち上げたニュースサイトの論説を転載。ウクライナ侵攻が計画通りに進まず、追い詰められるプーチン露大統領が求めるものは何なのか、ロシア人ジャーナリストが論説の中で詳しく解説した。

そんなプーチン氏の〝伝統的価値観〟とは詰まるところ、同性愛者への嫌悪感である「ホモフォビア」と「勝利という信仰」の2つだ。だが、同性愛者迫害が、強い指導者の永久支配につながる戦略ではないことは明白だ。そのため、プーチン氏に残されたのは「勝利という信仰」だけだった。

そして、それは徐々に具体化した。ロシア軍国主義という〝歌劇〟は、テレビを通してプロパガンダとなった。多くの専門家とされる人たちが、「ロシアは世界一強い」「われわれは誰からも指図されない」「ロシアのミサイルは地球を周回して、どの国でも破壊できる」などと主張した。馬鹿げているが、プーチン氏の演説もますます極右政治家・故ウラジーミル・ジリノフスキー氏のものに似てきた。

いまではプーチン氏は経済発展のような面白味のない話はしなくなり、〝比類のない〟新兵器についての話題には饒舌となり、「ロシアはもう一度やる」というフレーズがスローガンとなった。これは明らかに第2次大戦でソ連がナチス・ドイツを打ち破ったことを示し、再びやり遂げるというメッセージだ。

プーチン氏はこれまで4度の大統領選に勝利し、5度目を24年に迎える。だが、新型コロナウイルスの感染拡大はロシアで多くの犠牲者を出し、経済は行き詰った。プーチン氏に残された選択は限られている。権力を維持する最も有効な手段は「偉大な勝利の再現」だと結論付けたのだ。そのためには9日の戦勝パレードは十分ではなく、もっと血のイメージが必要なのだ。

もしロシア人がプロパガンダを信じられなくなったとしたら、伝統的価値観も戦勝記念日に英雄化された国家も信じられなくなる。そこに残るのは「核のスーツケース」を手にぶら下げ、腐敗政治という瓦礫の中をさまよう危険な人物だけだ。それを誰が信じるというのだ。

われわれは一体何者なのか。なぜこういう事態を許してしまったのか。それに答えるのは怖いことだ。ロシア人は最後の最後まで自分たちの神話にすがりつくだろう。そんな中、戦勝記念パレードに魅了され、大衆は陶酔する。

 

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